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2016年07月26日

彫刻家荻原守衛



明治の後期に、彗星のように現れた天才的彫刻家荻原碌山のことである。安曇野、大糸線穂高駅の近くに美術館があり、作品が展示されている。人生は、30年と短い。名字が同じなので、親近感もある。最近は、荻原浩が直木賞を受賞したので、荻原の認知度も上がっているかもしれない。初対面の人の7割くらいが「荻原」を「萩原」と間違える。
臼井吉見の小説『安曇野』の1巻と2巻に登場する。アメリカ、ヨーロッパに7年間留学し、ロダンの影響を強く受ける。この点は、高村光太郎も同じで、芸術をともに語り合える親友になった。最後に残した作品は「女」である。この作品を、仕上げた直後急死するのだが、死因は定かではない。小説の中の描写もあるが、様々に推測はされるが、明らかではない。モデルはいたが、イメージしたのは、新宿中村屋のおかみである相馬黒光と言われる。
彼の残した有名な言葉は、「相剋は美」である。碌山美術館にもこの言葉が刻まれている。
  

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2016年07月16日

『新宿中村屋 相馬黒光』宇佐美承著 集英社



臼井吉見の長編小説と併行して、相馬黒光女史の関連図書を読み始めている。著者は、朝日新聞の社会部の記者だった。取材記事でもあるが、相馬黒光も自伝を残しており、そこからの引用が多い。写真がふんだんに使われ興味深く読める。
若い時から学問に目覚め、西洋文化にも触れ、旧来の日本女性から抜け出している。それに加えて強烈な個性が時代の群を抜いている。田舎暮らしができなかった女性でもある。作家になろうとした夢はかなえられなかったが、名だたる文人や芸術家、宗教家、思想家、言論人との交友関係は、驚くばかりである。
しかも、新宿中村屋という個性的な店を経営した実業家でもある。今日でも新宿中村屋の商品は、多くの人に愛されている。東京に出たら立ち寄りたい店の一つになっている。店内に一級の芸術作品が置かれていることもこの店ならではである。
この女性を伴侶として生きた、相馬愛蔵という人の人間の器の大きさも見逃すことはできない。容姿だけでない、女性に対する魅力があることは、本の中での記述に現われている。男と女の組み合わせで、ダイナミックなドラマが生まれることに驚くばかりである。
  

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2016年07月14日

参議院選挙の後


政治の話題にはあまり触れないことにしている。ただ、戦争と平和については、黙して語らないというわけにはいかない。選挙が終わってみれば、自公政権が承認されただけでなく、改憲勢力が無所属を含めるとわずかながら3分の2を超えた。憲法改正、戦争が出来る国、戦前回帰と危惧する声が聞こえてくる。国民投票で決めるのだから、憲法改正が発議されても、世に言う戦争法案の基礎となるような憲法が承認されるようなことにはならないだろう。
正式な発表ではないというが、天皇の生前退位の記事が新聞に載り、テレビなどで報道され驚いた。参議院選挙の後だけに、憲法改正に絡んで微妙なタイミングだとおもったからである。皇室典範では、天皇は自らのご意思で退位できないようである。そのことには触れないが、先の大戦の開戦にあたって、戦争に反対し、終戦を決断し、戦後の復興と平和を願い続けたのは、昭和天皇であり、平成天皇も平和を願い、高齢の見ながら戦没者の慰霊の旅をされた事実である。
天皇家の伝統は、「ウシハク」ではなく「シラス」ということである。国民を支配するというより、国民を守るということである。権力を長く握ると腐敗するのは、歴史が証明するところであり、某知事もその謗りを避けられなかった。権威は、他人が認めるものだ。天皇の行為は、無私そのものに感じられる。
  

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2016年07月07日

『安曇野(第1巻)』 臼井吉見著 ちくま文庫



この本は、我が家の書棚にない。地域の開業医の先生からお借りして読んだのである。全部で5巻になっている。全巻読むのに1ヶ月くらいかかった記憶がある。朝、夜、休日の時間を割いての読書だったが、すっかり「安曇野」という場所が好きになった。友人を誘ったり、個人で何度も足を運んでいる。
明治、大正、昭和の歴史にも触れることができるが、新宿中村屋を創業した相馬愛蔵、黒光夫妻の交友関係が描かれており、芸術家が多い。とりわけ、荻原守衛は、安曇野の出身で関心を持った。碌山美術館は、味わい深かった。『安曇野』に登場する人物のゆかりの地を訪ねて旅をしたこともある。
碌山美術館を訪ねたおり、『臼井吉見の「安曇野」を歩く』という本を眼にした。同じ発想を持つものだと、購入した。取材記事なので面白い。こちらは、単行本で全3巻である。臼井吉見は、『安曇野』を書き上げるのに10年かかっている。この本も数年がかりである。
今回、あえて1巻だけを購入して読むことになった。東北を旅したとき、仙台駅で古本市があり、初版の『安曇野』の単行本全5巻が売られていた。荷物になることも考え、購入しなかったが、残念なことをしたという後悔の念がある。再度読み返しても良い本である。
  

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2016年07月06日

モーセの十戒

映画『十戒』は、何度見てもスケールの大きいスペクタルである。モーセが、シナイ山に登ると、光が走り、神が岩に十の戒めを刻む。それが、モーセの十戒といわれ、イスラエルの人々の信仰の指針になった。あらためて、列挙することにする。
わたしのほかに神々があってはならない
偶像を造ってはならない
主の御名をみだりに唱えてはならない
安息日を覚えてこれを聖なる日とせよ
あなたの父と母を敬え
殺してはならない
姦淫してはならない
盗んではならない
偽りの証言をしてはならない
あなたの隣人の家を欲しがってはならない。
万国共通の戒律ということにはならないが、我が家では「殺してはいけない、盗んではいけない、嘘をついてはいけない」と三つに絞って戒律にしている。今回のバングラデシュのテロ事件。論外である

  

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2016年07月05日

『心の対話 岡潔・林房雄』日本ソノサービス



昭和43年の出版である。絶版になっていて、古書でしか読むことができないようである。この本を手にしたのは、20数年前である。社会教育家の後藤静香のご子息の後藤潔さんの別荘にあった本棚から譲っていただいたものである。当時も絶版だったと思う。最近は、対談者である岡潔の本が再販されるようになったが、岡潔の没後、著作は出版されず古書で読むことしかできなかった。
林房雄も忘れられた文学者に近い。戦前、左翼から右翼に転向した作家として知られ、この時期、三島由紀夫との親交があった人である。三島事件は昭和44年だから、この本が出版されたのは、その前年である。学生運動が盛んだった時代である。高校生の時代で、政治に関心はなかった。
対談するくらいだから、2人に共感する意識があることは、当然である。日本人の心のあり方について多くを語っている。もっぱら岡潔は、日本人の心に言及している。林房雄は、政治や経済に触れている。こちらは、岡潔が聞き役になっている。改めて読んで新鮮だったのは、岡潔が経済立国を強調している点である。岡潔は、自分の経済は眼中にない人だが、国の経済は心配していたのである。先生らしいと感心した。
一方、林房雄だが、右翼と言われるほど民族主義者ではなさそうである。公明党の母体である創価学会にも寛容である。さらに、西洋文化は、物質文明だから悪いとも言わない。自民党の歴代首相(佐藤総理まで)も愛国者であり、金権政治家とも言わない。日本国憲法の成立と批判的な見解もある。
  

Posted by okina-ogi at 12:55Comments(0)書評

2016年07月02日

童話『巣から落ちた小雀』

良子先生は、幼稚園の先生をしている。
音楽大学を卒業したので、ピアノが上手い。園児に童謡を演奏しながら歌って聞かせてくれる。園児はそれが楽しみで、すぐに覚えてしまう。
日本の童謡が、良子先生は好きで、園児には難しい歌詞もある。
「まいごのまいごのこすずめは、お寺のやねで、母さんどこよときいたけど、ポクポク木魚の音ばかり」
園児は健気に聴いていたが、演奏が終わると
一人の園児が、珍しく良子先生に
「この歌、悲しいし淋しい感じがする」
良子先生は、振り返って
「ハルちゃん、よくわかるね。でも先生の好きな歌なのよ」
ピアノに向かい
「もう一度弾いてみましょうね。みんなも先生に合わせて歌ってごらん」
「まいごのまいごのこすずめは、母さんたずねてよんだけど、サラサラつめたいかぜばかり、かぜばかり」


良子先生の働いている幼稚園の近くには、森があり、雀が園舎にやってくる。玄関は、軒がせり出して、いつのまに巣を作ってしまう。今日も、チュンチュン鳴いている。時々、雛が落ちてしまうことがある。
園長先生にお願いして、巣ができないように建物の改修をお願いしたことがある。
雀は、子供たちも嫌いではないし、玄関先が糞で汚れても掃除すれば良いと、良子先生の提案を聞いてくれない。

この日も、演奏が終わり、職員室に帰ると
「雀の雛が落ちたみたい」
と、同僚の先生が窓の外を見て言った。
「運がなかったのだね。この雀はもう親雀は育てられないね」
と園長先生は、冷静な声で言った。

良子先生は、ちょっとムッとして
「私が家に連れてっていって育てます」
すると、横から同僚の男の先生が
「良子先生、雀の雛を育てるのは大変ですよ」
と言って体験談を話してくれた。
この先生は、以前この園舎の玄関先に落ちた雛を飼って育てたことがあるのである。
その話はいたって具体的で、良子先生は納得するように聴いた。


食べさせるのに一苦労がある。虫しか食べない時期があり、虫取りが大変。正面から食べさせると口を開かない。斜めからすばやく食べさせるのがコツ。それに頻繁に口に餌を運んでやる必要がある。出勤の日は、袋に入れ一緒に通勤した。家に帰れば、手作りの箱に入れ、猫に食べられないように、洗濯籠に入れ、天井に吊るすなどして育てたと言う。「大変だよ」という言葉の背景が良く分かる。でも、巣立ちの後、一度だけ戻ってきたという。恩を忘れなかったのであろう。鳥にも情がわかるのかもしれない。

この先生は、クリスチャンで、動物にも優しい。恥ずかしそうに聖書に書かれている「善きサマリヤ人」の話をした。
「孔子さんも『義を見てせざるは勇なきなり』とも言いましたな」
と頭をかいている。

良子先生は、決めたとばかり玄関に飛び出し雛の元に飛んでいった。ところが、雛はそこにはいなかった。迎えに来た父兄がどこやらに片付けてしまったのかと思った。良子先生は、悲しくなってその場にうずくまってしまった。
その時である。良子先生の肩に何かが落ちた。また、雛が巣から落ちてきたのである。良子先生の心は、複雑だった。


  

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2016年07月02日

童話の素材

童話を書いてみようと思うが、その感性が無い。どうしても大人の論理が支配してしまう。先日、こんな場面に遭遇した。ある老人施設の建物は、立派な鉄筋コンクリート作りで軒が張り出している。そこを絶好の住処にしているのが雀である。玄関前に糞を落としたりするので、職員は対策に苦しんでいる。議論百出するが、雀は毎年巣作りに励んでいる。すっかり、雀のお宿になってしまった。
巣立つには早い、雀の雛を発見。巣から落ちたのである。さて、どうするやら話題になっている。通りかけた、面会者が気づき、駐車場の脇の草むらに置いた。さすがに、車の下敷きになるのは偲びがたかったのである。女性職員が見かねて「私飼おうかな」という。
先輩職員が体験談を話し始めた。彼は、雀の雛を1ヶ月ほど養育した経験がある。実に具体的である。食べさせるのに一苦労がある。虫しか食べない時期があり、虫取りが大変。正面から食べさせると口を開かない。斜めからすばやく食べさせるのがコツらしい。それに頻繁に口に餌を運んでやる必要がある。出勤の日は、袋に入れ一緒に通勤した。家に帰れば、手作りの箱に入れ、猫に食べられないように、洗濯籠に入れ、天井に吊るすなどして育てたと言う。「大変だよ」という言葉の背景が良く分かる。でも、巣立ちの後、一度だけ戻ってきたという。恩を忘れなかったのであろう。鳥にも情がわかるのかもしれない。
女性職員は、納得して聞いている。退勤する時、面会者が雛を置いた草むらに行った。そこには、雛の姿がなかった。居れば、連れ帰って飼おうと思った。「巣から落ちた雀」というタイトルで童話を書いてみようと言う気持ちが湧いたが構想が生まれてこない。今のところ素材でしかない。ふと思ったことは、聖書に出てくる「善きサマリヤ人」の話である。見てみぬ振りのできない優しさが主題になる。彼女に尋ねると「母性本能ですかね」。こういう職員がいることは、嬉しい。
  

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2016年07月01日

ノウゼンカズラ



この時期に、道路を車で走っていると、垣根や、木に絡まるようにして咲いているオレンジ色の花が目に付く。ノウゼンカズラという名前を知ったのは、それほど昔のことではない。俳句をする人間として恥ずかしい限りだが、最近外国からやってきた花だろうぐらいの意識だったのである。ノウゼンカズラは、中国が原産らしいが、平安時代から日本で植えられていたようだ。
蔓性の植物なので、巻きついて支えてくれるものが必要。新居に隣接して、イチョウの大木があり、落ち葉が大量に落ちることを考え背丈をつめ、枝を落とした。春になって芽吹き緑も出てきたが、いかにも無残な姿に見える。そこで思いついたのが、イチョウの木の根元に、ノウゼンカズラを植え、絡ませてみようという発想になった。小さな苗木だから、マシになるのは数年後だと思うが楽しみである。

  

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