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2012年09月20日

心に浮かぶ歌・句・そして詩21

倭は 国のまほろば
  たたなづく 青垣
  山籠れる 倭しうるわし
国偲びの歌は、奈良を訪ねる旅に脳裏に浮かぶ。明日香あたりに行くとその感を強くする。この歌から、古代の悲劇の英雄、日本武尊のことを想起する。以前、友人たちと、鎌倉、江の島、三浦半島を旅行したことがあった。日本武尊について触れている。

  三浦半島、鎌倉へ(一部抜粋)
旅の初日の訪問地に観音崎を選んだのは、春雨塾の人達らしい。ここには、日本最初の洋式灯台があるが、現在のものは三代目である。初灯は明治二年と入場券に書いてある。灯台からの浦賀水道の眺めも素晴らしいが、近くに走水という古い地名があって、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征の折、対岸の上総の国(千葉県)へ船を漕ぎ出したのが走水である。古事記と日本書紀に、表現は少し違っているが、荒れた海の中に、海神の怒りを鎮めるために夫人の弟橘媛(おとたちばなひめ)が身を投じたとされる話が載っている。遠い昔の出来事に想いを馳せるのも良い。
 一九九八年、皇后陛下が、インドのニューデリーで「子供の本を通しての平和―子供時代の読書の思い出―」と題して講演された。先年、出雲大社に参拝したとき、皇后陛下のご講演の内容が小冊子になって無料配布されていた。その中に弟橘媛の話が載っている。少し長いのだが、実に深い印象を、子供の頃の皇后陛下の心に落とした物語として語られている。

「父のくれた古代の物語の中で、一つ忘れられない話がありました。
 年代の確定できない、六世紀以前の一人の皇子の物語です。倭建御子(やまとたけるのみこ)と呼ばれるこの皇子は、父天皇の命を受け、遠隔の反乱の地に赴いては、これを平定して凱旋するのですが、あたかも皇子の力を恐れているかのように、天皇は新たな任務を命じ、皇子に平穏な休息を与えません。悲しい心を抱き、皇子は結局これが最後となる遠征に出かけます。途中、海が荒れ、皇子の船は航路を閉ざされます。この時、付き添っていた后、弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと)は、自分が海に入り海神の怒りを鎮めるので、皇子はその使命を遂行して覆奏してほしい、と言い入水し、皇子の船を目的地に向かわせます。この時、弟橘は、美しい別れの歌を歌います。
 さねさし相武の小野に燃ゆる火の火中(ほなか)に立ちて問ひし君はも
 このしばらく前、建(たける)弟橘とは、広い枯れ野を通っていた時に、敵の謀にあって草に火を放たれ、燃える火に追われて逃げまどい、九死に一生を得たのでした。弟橘の歌は、『あの時、燃えさかる火の中で、私の安否を気遣ってくださった君よ』という、危急の折に皇子の示した、優しい庇護の気遣いに対する感謝の気持ちを歌ったものです。
 悲しい『いけにえ』の物語は、それまでも幾つかは知っていました。しかしこの物語の犠牲は、少し違っていました。弟橘の言動には、何と表現したらよいか、建と任務を分かち合うような、どこか意志的なものが感じられ、弟橘の歌はー私は今、それが子供向けに現代語に直されていたのか、原文のまま解説が付されていたのか思い出すことが出来ないのですがーあまりにも美しいものに思われました。
『いけにえ』という酷い運命を、進んで自らに受け入れながら、恐らくはこれまでの人生で、最も愛と感謝に満たされた瞬間の思い出を歌っていることに、感銘という以上に、強い衝撃を受けました。はっきりした言葉にならないまでも、愛と犠牲という二つのものが、私の中で最も近いものとして、むしろ一つのものとして感じられた、不思議な経験であったと思います。
 この物語は、その美しさ故に私を深くひきつけましたが、同時に、説明のつかない不安感で威圧するものでありました。
 古代ではない現代に、海を静めるためや、洪水を防ぐために、一人の人間の生命が求められるとは、まず考えられないことです。ですから、人身御供というそのことを、私が恐れるはずはありません。しかし、弟橘の物語には、何かもっと現代に通じる象徴性があるように感じられ、そのことが私を息苦しくさせていました。今思うと、それは愛というものが、時として過酷な形をとるものなのかもしれないという、やはり先に述べた愛と犠牲の不可分性への、恐れであり、畏怖であったように思います。
 まだ、子供であったため、その頃は、全てをぼんやりと感じただけなのですが、こうしたよく分からない息苦しさが、物語の中の水に沈むというイメージと共に押し寄せて、しばらくの間、私はこの物語にずい分悩まされたのを覚えています」

愛は犠牲である。けれども死をもって示す愛があるのかということが少女として理解の範囲を超え、息苦しさという表現で語られたのだと思う。
夫の日本武尊は、齢三十の生涯であったと伝えられている。


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