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2012年10月02日

心に浮かぶ歌・句・そして詩32

金色の小さき鳥のかたちして銀杏散るなり夕日の岡に

与謝野晶子の歌だが、素直に秋の情景を詠っていて好きな短歌である。有名な彼女の歌には、明治の人には、赤裸々過ぎる女の情念のようなものを詠ったものが多い。たとえば、

やわ肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君
鎌倉やみほとけなれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな
清水へ祇園をよぎる桜(はな)月夜今宵会う人みな美しき

与謝野晶子は、堺の商人の家に生まれた。歌人、与謝野鉄幹に嫁ぎ、多くの子も成した。人生そのものが情熱的である。次の詩は、天皇制であった時代に、大胆な内容になっている。反戦歌である。

あゝおとうとよ、君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや

堺の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事ぞ
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり

君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみずから出でまさね
かたみに人の血を流し
獣の道で死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
おほみこころのふかければ
もとよりいかで思されむ

あゝおとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され、家を守り
安しときける大御代も
母のしら髪はまさりぬる

暖簾のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻を
君わするるや、思へるや
十月も添はで 別れたる
少女ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ


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Posted by okina-ogi at 18:46│Comments(0)日常・雑感
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