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2012年10月17日

今道友信先生追悼

 哲学者の今道友信の訃報が、新聞で報じられている。今から10年前の2002年6月14日に、公開教養講座の講師としてお話しいただいたことがある。その時の、講演の模様を、法人の広報誌にかかせていただいた。先生には、巻頭言に原稿をいただいた。その両方を記載し、先生のご冥福を祈りたい。なお先生は、「ナベツネ」こと読売新聞会長渡邉恒雄氏の東大哲学科の先輩で、「今道さんの頭の良さには脱帽した」という文章を、渡邉氏の著書で読んだことがある。
「福祉と芸術」(講演のタイトル)
「今道友信先生は、高名な哲学者である。今日までに、多くの講師の講演会を開催してきたが、聴講者の中には、「よく講師としてよべましたね」という方がいたように、今道先生は、一級の学者である。哲学者の話は、難しいはずだが、わかりやすい言葉で話していただいた。「芸術作品は、生活が困窮したときに真っ先に売るものだ。しかし人類にとってかけがえのないものだ」と冒頭に話された言葉が印象的であった。言葉ひとつひとつを選び、ある時は、眼にうっすらと涙を浮かべながらパリ時代の思い出を語られ、御人柄が伝わってきた。愛についても言葉を超えて語りかけられた気がした。

「違った考えについて」(巻頭言のタイトル)  今道友信
 違った考えを言う人がいると、すぐ色をなして間違っているという人もいる。どうも日本の社会の困ったことのひとつは一律でみんなで渡れば怖くない式の群集心理による同一行動をとっていると安心するところがある。
 私も何も個人がみな散りじりに一人となって共同作業などできはしないような、恣意的な利己主義者にみちた社会がよいなどと言っているのではない。恣意すなわち我がままではなく自由を大切にし、利己主義すなわち自分さえよければ他人はどうでもよいという考えではなく個人主義すなわち他人も自分も個人として相互の独立的人格を認め合う社会になるべきだと言っているのである。
 そうすれば企業ぐるみ、省庁ぐるみ、党ぐるみのごまかしや悪企みはいくらか正しく直される機会が内部から生じてくるのではあるまいか。会議があっても社会の風潮や国家の方針や経済の力に呑まれてしまって大勢の赳くままに、それと違った考えが言えないのではなく、考えられもしないような一律主義の社会は全くあぶないものだと思う。大衆を扇動する者があらわれて調子のいいことを言って叫びを上げると、我を忘れてひとつになりそうだ。
 違った考えをひとつ書いてみようかと思う。それは、サッカーのことだ。あれほど非人間的でばかなスポーツはない。人間が文化を高めて来たのは「手により、頭脳による」というのはアナクサゴラースが大昔に言ったことだが多分そうだろう。「物すごい速度の球を手を使わずヘディングすれば、一回どれだけの脳細胞が死ぬか、手は正々堂々と使わずにいれば退化するだろう。サッカーは非人間化のスポーツだ」こういう考えもあるので、あまりサッカー試合でナショナリズム的興奮に陥るのもあぶないきざしだろう。こういう考え方について笑って話し合えるのが人間社会だ。
 思えばおたがいに違った考えをもっていればこそ対話も生きる。

今道友信(いまみちとものぶ)1922年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒。英知大学教授。東京大学名誉教授。『美の位相と芸術』他著書多数。


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この記事へのコメント
今道友信先生が、日本の一般の人にあまりにも知られていないことは
とても残念です。
Posted by 津田みや子 at 2012年12月09日 12:34
コメントいただきありがとうございました。ブログに不慣れで返信が遅れて相すみません。今道先生のように、日本人は自分の考え整理して述べる習慣を身につけるべきです。相手の意見も聞くことはもちろん。そのために、私は、本を読んだら書評を書くことにしました。
Posted by okina-ogiokina-ogi at 2012年12月19日 18:58
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    コメント(2)