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2012年12月08日

「海行かば」

心に浮かぶ歌・句・そして詩61
 
 12月8日は、日米開戦の日。避けたい戦争であったが、山本五十六連合艦隊司令長官は、真珠湾奇襲作戦を企画した。日米交渉が妥結すれば、即時作戦を中止するつもりでいた。艦隊をまかされた、南雲中将は、「一度出した小便は、止まらない」という下品な言い方をして、作戦の中断は、不可だというと、山本長官は烈火の如く「100年兵を養うは、平和のためだ」といった。しかし、不幸にも戦争に突入してしまった。


「海行かば」

海行かば 水漬(みづ)く屍(かばね)
山行かば 草生(くさむ)す屍
大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ
かへりみはせじ

たった、これだけの文章が歌になった。不幸なことに、戦争を鼓舞し、出征兵士を送る歌になった。あるいは、海軍葬の時にも流されたかもしれない。作曲したのは、信時潔である。大阪の出身で、東京音楽学校を卒業し、全国の多くの校歌を作曲している。
 歌詞は、大伴家持が、陸奥の国に赴任するときの文章の中にある短歌である。赴任先は、塩竃神社に近い場所にある多賀城跡であるが、一度立ち寄ったことがある。日本三大古碑のひとつ、壺の石碑(つぼのいしぶみ)を訪ねたのである。
 歌曲としてみれば、実に格調の高い調べであり、名曲といって良い。
「大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ」
は、まさに、辺境に赴任する家持の心境なのであるが、現代なら「国民の」とか「公の」のために献身するという内容であれば受け入れられようが、それでは詞としての格調が低くなる。


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Posted by okina-ogi at 08:55│Comments(0)日常・雑感
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