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2013年02月24日

「美しき天然」

心に浮かぶ歌・句・そして詩91
 
 佐世保に来たのは、海上自衛隊の資料館を見ることよりも、ある人物の足跡を訪ねてみたかったのである。田中穂積という人で、「美しき天然」の作曲者である。九十九島の見える展海峰という場所に、近年銅像が立てられということだが、市内からは車で四十分はかかるので、行程には組めなかった。海軍墓地に墓があるというのでお参りすることにした。海軍墓地は、東公園となっていて佐世保市が管理している。日清戦争以来の殉職者の御魂が眠っている。個人の墓も多いが、先の大戦ではあまりにも多くの海軍軍人が亡くなっているので、艦船ごとに供養されていたりする。戦艦榛名のものもあった。田中穂積の墓の隣には、軍歌「広瀬中佐」で知られる杉野兵曹長の墓もあった。管理人さんにいただいた線香をあげた。
 田中穂積(一八五五~一九〇四)は、佐世保海兵団軍楽隊の三代目の軍楽長であった。山口岩国の人である。「美しき天然」は、日本初めてのワルツの曲である。最初は、佐世保の女学校の唱歌として作ったのだが、楽譜がサーカスやちんどん屋に演奏され、全国に広まっていった。演奏が容易であったためである。作詞者の、武島羽衣は、滝廉太郎の「花」の作詞者としても有名である。田中穂積はこの武島羽衣に詞に曲をつけたのである。その詞は一番だけだが

空にさえずる鳥の声
峰より落つる滝の音
大波小波どうどうと
ひびき絶えせぬ海の音
聞けや人々おもしろき
この天然の音楽を
しらべ自在にひきたもう
神の御手(おんて)の尊しや

 詞の最後が、神の御手になっている。この神はキリスト教の神の響きがある。自然との対話、鳥のさえずり、アッシジの聖フランシスコを連想した。長崎は、やはりキリスト教と密接な土地になっている。


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