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2013年05月24日

福祉を廻る識者の声』(井上勝也)

福祉を廻る識者の声』
 上記のタイトルの本が出版されているわけではない。高崎市中室田町に社会福祉法人新生会という老人福祉施設を経営する公益法人があって、広報誌「新生」を発行している。創立は、昭和32年である。遡ること昭和13年に、同じ地に結核保養所「榛名荘」が創設され、創立の中心となったのが、原正男氏である。現在、財団法人榛名荘として病院と、高齢者の介護事業を行っている。原正男氏は、長く両法人の理事長であった。若い時、結核に罹り、結核撲滅を使命に感じ、施設創設の前に、結核療養の啓蒙運動を開始した。その機関紙が「新生」であった。
 昭和58年春に法人の広報誌として再刊され、今日まで続いている。昭和60年の秋に編集を任され、約16年間編集後記も書いた。巻頭言には、多くの識者の声を寄せていただいた。一度広報には載せているが、再掲するのも意味があるかと思い進言したが、実現してない。非売品と思えば、ブログを利用して連載するのも良いかと思いたった。寄稿者の肩書は当時のものであり、現在鬼籍に入られた方もいる。老人福祉の歴史とも無関係ではない内容になっている。
 
 ジェロントピアをめざして           井上勝也
 いま現在、この世のどこにもジェロントピア(老人天国)がないことは確かである。なるほど物質的に恵まれたり、家庭的幸福に身を置いたり、元気に働いたりしている人々は結構いるものだ。しかしその人々の心の中に、「年をとって本当に良かった!」という老いの積極肯定のできる人がどれほどいるであろうか。
 老いを否定し、寝たきり状態を否定することは、自分を否定し、自分の状態を否定したことである。ここには、ジェロントピアがあろうはずがない。たとえ物質的に恵まれ、家庭に恵まれ、元気に働いていたとしても、である。
 自己を積極的に肯定すること、自己の老いも自己の寝たきり状態も、自分の何もかも含めて自己を積極的に肯定すること―それこそジェロントピアではあるまいか。強く自己を肯定すること、それが真のジェロントピアというものなのである。ただし、そのジェロントピアを実現することは、難しいといえば、これほど難しいことはないし、易しいといえば、これほど易しいことはないかもしれない。要するにその人の心のあり方ひとつなのである。
 万巻の書に埋もれて、一行の真実を知らない人がいる。大いなる幸福にいて、幸福を知らざる人がいる。その反対に、一冊の本を読まなくても大いなる真理を知る人もいれば、赤貧を洗うが如くであっても、心豊かな幸福な人もいる。要は、その人の心のあり方ひとつであろう。
 幸福の青い鳥は、散々捜しあぐねた結果、わが家の鳥かごにいた。ジェロントピアも、わが心のうちにあるにちがいないのである。それに気づかなければ、ユートピアが「どこにもない国」であるように、ジェロントピアも「どこの老いにもない」ことになってしまうだろう。
 
井上勝也(いのうえかつや)。東京都老人総合研究所心理・精神医学部心理研究室長。著書『老人心理のアプローチ』、『ハンドブック老年学』、『老年心理学』。二十一世紀の老人を考える会初代会長。
                                  (昭和五十八年・春号)


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