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2013年05月24日

『福祉を廻る識者の声』3(高井清)

心ある福祉を求めて               高井清
 何事も外部より見ているのと、自分で実行するのでは全く違うといいますが、わたしも最近老人福祉施設の創設に関係して、その感を深くしています。
 特に、現代我が国の福祉は、政府、いわゆる行政機関が全てこれを行っているつもりでいるようです。これは、わたしたちの側からみると「お仕着せ福祉」と見えるのかも知れません。
 世間では「金を出せば口も出す」というのは当然で、福祉行政もまさにこの構図の典型といえます。
 例えば、わたしは定款の目的に「キリストの愛の精神にもとづき::」と入れたのに、行政担当者はこれを削除するように強く指導して曰く「今や福祉をやるのに精神などなくてもやれます」と自信をもって断言し、結局「博愛の精神にもとづき」とすることで認可を受けました。
 しかしこの行政担当者のいう福祉に於ける「精神不要論」は、その後自分が実際に福祉の現場に深く関係すればする程、このことばは現代福祉を象徴するものとして誠に名言であると思うようになりました。
 聖書のことばに「あなたの宝のある所に、心もある」(マタイ六・二一)というのがあります。わたしたちは自分の心を明確にとらえるのは難しいですが、自分にとって何が宝であるかを探すのはそれほど困難なことではないと思います。そうはいっても、わたしには宝がたくさんあるように思えて迷っていますが、ただ福祉についてはキリストの教えた「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」という精神を宝であると思っています。
 福祉は、この愛の精神から始まったのではないでしょうか。行政のカントクの下に心なき福祉を行うより、野に出て「キリストの愛の精神」を旗印に自由に歩みたいと思っているのが福祉新入生の今日この頃です。
 高井清(たかいきよし)。社会福祉法人福音会常務理事、施設長。日本基督教団上高井戸教会牧師。                    (昭和五十八年・秋号)


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