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2013年05月24日

『福祉を廻る識者の声』4(柚木崎次郎)

あたりまえのこと              柚木崎次郎
 昨年の敬老の日の直後、行政管理庁から「老人対策に関する行政監察」結果が発表されました。その時、大変気になったのは、特別養護老人ホームで、深夜おむつを替えていない施設が五二.八%、午後五時以前に夕食時間を決めていたのが、四〇%という数字です。
 「夜中に、おむつが濡れて気持ちが悪い」「普通の夕食時間に食べたい」このごく当然なことが、老人福祉法が施行されて二十年も経つというのに、特別養護老人ホームの約半分が行っていないという現実です。
 ごくあたりまえのことが約半数の施設で、何故できないのでしょうか。「入居者の立場」に立つと、あたりまえのことが、「職員の立場」に立つと、あたりまえでなくなるのです。
 「大変だから」「帰りが遅くなるから」という理由で見過ごしてきたのではないでしょうか。これでは、タテマエでは「老人中心主義」と言っているけれど、ホンネは「職員中心主義」と言われても、仕方がないでしょうか。
 「夜中におむつが濡れて安眠できるでしょうか」「夕食を、いつも早めに食べることに、人間としての憩いはあるのでしょうか」。
 「福祉」とは、何も特別なことをやることではありません。普通の人間として、ごくあたりまえのことをするだけなのです。
 「福祉」は、「他人の痛み」を「自分の痛み」として、受けとめることから出発するのです。
 聖書の中の一句に「神は細部に宿りたもう」という言葉があります。
 私流に解釈すれば、老人のお世話には、「老人の心の襞(ひだ)にふれるキメのこまかさこそ大切」と、示唆しているのではないでしょうか。
 


柚木崎次郎(ゆきさきじろう)。茨城県、特別養護老人ホーム西山苑施設長。(昭和五十八年・冬号)


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