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2013年05月26日

『福祉を廻る福祉の声』6(原慶子)

プライバシーと親和性                  原慶子
 昭和四十九年の四月の四月に榛名憩の園の指導員として老人ホームの仕事に関わって早十年余りの月日が流れました。
 当時カッカと「一人を凝視(みつ)める」ことで私の心は燃えていました。
 そして今、私の関心は「私が一人を凝視める」ことから「真の意味での個の尊重」に移ってきています。
 先日二十日間ほどヨーロッパの老人国(いずれも六十五歳以上の人口が十パーセントを越えている)を見学してきましたが、ただ街を歩いているだけで沢山の老人に会うことができるのです。
 何も老人ホームを訪ねなくても、レストランにも公園にも商店にも優雅にくつろいでいる老人達の姿が在るのです。街の随所で出会う老人達はどの人もにこやかにゆとりをもって周囲の人々や風景を楽しんでいるように見えました。彼らはきっと誇りと自身をもって年をとり、自分の生活をエンジョイする感覚に恵まれているのでしょう。
 もう少し硬い表現をすれば、「自分を生きている」とも言えましょう。また「自と他の個を尊重した社会」だからこそあのエレガントなエイジングが存在するともいえましょう。個の尊重が充分なされる文化と、そのことを経験的に知っている人々の手で、優雅な老化は創造されるのでしょう。私は個の尊重の基本に決して欠くことのできない条件はプライバシーだと思います。プライバシーとは空間的には個人の占有空間であり、精神的にはその人の独立した固有な心理的時間のことです。個の自立、つまり人間らしく在るための時間と空間がかなえられたときに人はゆとりをもって、他者に親しみを感じ、さりげなく温かく語り合いたい気持も起ってくることでしょう。それが親和性です。
 一つの住環境にぜひとも必要なのは、プライバシーを快適に保証することと、みんなで使える多彩なコモンスペースです。いつでも誰でも気楽に利用できるコモンスペースの貧しさが、日本の老人ホームの建築的貧困ともいえるのです。これからの老人ホームは、この点を充分考慮したものであることを願ってやみません。
 原慶子(はらけいこ)。特別養護老人ホーム榛名憩の園園長。      (昭和五十九年・秋号)


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