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2013年06月16日

『福祉を廻る識者の声』33(藤倉敏夫)

脳死臓器移植と尊厳死              藤倉敏夫
 脳の機能が失われても(これを脳死といいます)人工呼吸装置をつけると心臓はある期間、拍動を続ける場合があります。この点について脳死臨調では「脳死を人の死」とみとめる中間意見を出しました。議論が脳死と臓器移植に集中したので、結果として脳死状態で臓器を摘出しないと移植ができないような印象を一般の人々に与えているようです。
 心臓と肝臓の移植は脳死の臓器を使わなければできませんが、臓器によっては心臓停止のあとで摘出しても移植に異常なく使える場合もあります。角膜移植のための眼球摘出や腎臓移植がよい例です。
 ところが、脳死でなく心臓死の場合でさえ臓器を移植に提供される方がすくないのが現状です。また提供されても、その方の承諾の意志が明確に表示されていなければなりません。ですから今必要なのは、このようなことの承諾をふくめて、「生と死に関する希望」を具体的に署名入りで書き残しておくリビング・ウィル(生前発効の遺言書)です。ライシャワー博士は単なる延命のための措置をさけ、従容と死途についたことが報じられていますが、これが尊厳死とよばれるものであり、それが可能であったのは彼のリビング・ウィルを尊重したからです。
 日本でも死にゆく人の立場を考慮した尊厳死の事が脳死の論点になるべきでした。なぜかといいますと、脳死を人の死と認めれば臓器移植以前の尊厳死、つまり脳死の前後に人工呼吸器をはずしたりしてもよいのか、それを決める必要が生じてくるわけで、これはたいへんむずかしい問題です。
 人工臓器には脳死の問題はありません。臓器の機能と同じ水準で機能する人工臓器を開発できれば、問題の当面の解決は可能です。そちらの方にもよりいっそうの努力を注ぐ必要があると思います。

藤倉敏夫(ふじくらとしお)。一九二四年、東京生まれ、慶応義塾大学医学部卒。米国の大学、研究所に二十四年間勤務。東京医科歯科大学客員教授。              (平成三年・夏号)


雲仙普賢岳噴火               (平成三年・夏号)
 長崎県雲仙普賢岳の活動は、火砕流によって多くの犠牲者を出した。火山予知の観測技術は、火山国の日本は世界最高の水準に達しているが、自然の猛威を予測することはむずかしい。今も、島原市周辺の住民は、避難所に不自由な生活を強いられている。住みなれた家や土地を失い、先々の不安をかかえながら暮らしている人々に同情の念を禁じ得ない。
 全国からの支援の声は高まり、一億円以上の募金が集まったという記事を見た。梅香ハイツでは、有志の人たちがその募金を行っている。社会福祉施設は、とかく募金を受ける側と思われているが、赤い羽根募金はもちろん、さまざまな支援の募金活動を新生会では行っている。
〝同情〟ということを越えて行為になったとき、それは福祉の心となる。一日も早く被災民の方々に平常の生活が戻ることを祈るばかりである。(翁)


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Posted by okina-ogi at 03:37│Comments(0)日常・雑感
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