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2013年06月19日

『福祉を廻る識者の声』37(岡田芳保)

桂林の光                   岡田芳保
 二年前から時々会って企画を考えていた。中国桂林出身の画家楊永琚(ようえいきょ)さんの個展を五月中旬に十日間開催した。真摯な楊永琚さんに惹かれたからだ。期待どおり盛会であった。日中国交正常化二十周年記念にふさわしい企画として群馬の多くの人々に見ていただき、高い評価もしていただいた。
 画家楊永琚さんは今年四十六歳で中国美術家協会会員でもある。六十数点出品作品のほとんどが水墨画である。その絵は桂林の雄大な風景の中にゆったりと大気が流れている。気が画面から漂い川風が首筋にひんやりとしてくるようだ。私の羨望を煽る。楊永琚さんの作品の中には宋代の絵画の精神が脈々と流れている。五メートルもある大作「桂林朝霧」の前に立つと作品の中に自分が入ってしまっている。大河は滔滔と流れ屹立する山々に時々驟雨が激しく降り舟を漕ぐ蟻のような人間の営みが哀切の歌のように聞こえてくる。楊さんは長野市の善光寺大本願の連作襖絵「桂林の雨」「寒林宿崖」「鶴の湖」等の大作も制作した。二年間、日本に滞在しているので日本語の会話もかなりのものだ。普通の日常会話は何とか通じる。一週間近くつき合って言葉の感覚の鋭さ、理解の早さに驚く。さぞ優秀な頭脳の持ち主なのだと思う。言葉が完全に通じていないのに、こちらの言うことを完全に近い状態で理解する。中国の血肉となっている伝統絵画の重荷と、そこから抜け出して近代的な洋画風表現の世界との融合をみせようとして貧婪なまでに悩み踠(もが)いている。好んで描く桂林の中にも、風雨に打たれる芍薬の花の中にも、日本の風景にした作品の中にも、そうした感覚が生々しく躍動している。楊さんは絵画は技術ではなく心だ!人間だ!人間の深さだと強調する。風景を描いても人間を表現出来なければ人を感動させないとも言う。また楊さんの書もよい。確かな人格がある。日本の雪舟、一休から多くを学ぶという。十年もするとすばらしい本物な画家になるだろう。十年後の再会が楽しみだ。この個展を記念して十六日、楊永琚展覧会場で中国琵琶の名手で美人の王偉華さんが友情特別演奏をしてくれた。圧倒された。日本の琵琶演奏と違い弾急のうねるような空間に投げ込まれた。中国の画家と音楽家を知り、
測り知れない歴史の深さと大きさを知らされた。それはまさに桂林の光であった。
 
 岡田芳保(おかだよしやす)。群馬県群馬町生まれ。煥乎堂取締役本店店長。  (平成四年・夏号)


青い山脈                       (平成四年・夏号)
戦後間もなく「青い山脈」が国民に広く歌われ大ヒットした。暗い世相を打ち払うような明るさと明日への希望が込められた詩が人々の心を強く動かした。「青い山脈」の舞台となったのは、どこと限定できないが、群馬の山々だと聞いたことがある。作曲の服部良一さんは、群馬県が好きで、榛名湖を歌った「湖畔の宿」の作は有名。「青い山脈」は、空の青さのイメージに加えて緑濃き山々の姿の印象がある。
万緑という季語があるが、そのような季節に、質素ながら清潔な白の夏服を着た青年の姿が浮かぶ。昭和十三年の榛名荘結核保養所創設から、新生会創立の三十年代始めの頃までの時代は、苦難に満ちた時代であったと聞くが、明るく希望に燃えて生きる人々の姿が目に浮かんでくる。そのリーダーが原正男理事長だった。このたびの叙勲は、この時代に贈られた勲章と思えてならない。(翁)


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