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2013年07月24日

終の住み家を老人ホームに定めた人々3

人に感謝し感謝される人生 秋吉ヨ子(ね)さん(昭和六十一年・冬号)
 海に詳しい人なら〝秋吉表〟と呼ばれる潮汐表の存在を知っているだろう。全国各地の海岸、港湾の長期的な潮位を知るための基礎表とでもいうもので、作成したのは、秋吉さんの御主人、故秋吉利雄少将である。
「またお母さんのお惚気が始まった」
と茶化されても
「アキヨシは、私にとって最高の男性です」
と言い切る夫への敬愛の深さは、そのまま秋吉さんの幸福な人生を象徴しているように思えた。
 淡々として、流麗な文章の響きに似た語調が柔和なお顔に溶けて快い秋吉さんの話に時の経つのをつい忘れてしまう。
 秋吉さんは、若くしてアメリカに渡った。ルーズベルト大統領夫人の計らいで三年間滞在することができ、おかげで、多くのすばらしい友人を得ることができた。古いアルバムに貼られた、黒髪の麗しき女性の載っている新聞の切抜きや、写真の数々がそれを証明してくれている。YWCAの仕事であった。
 「チャンスはあちらから出掛けてくるのよ」
とあっさり言われたが、秋吉さんの明るく誠実な人柄が、すばらしき人々との出逢いを実のあるものにしたのだろう。求められたとき、誠心誠意で応える秋吉さんに深い信仰と教養の積み重ねを感じた。秋吉さんを頼って榛名を訪れた人は多い。
 現在、「聖書の天文学」という一〇〇年前に英国で書かれた本を翻訳し、立教大学で旧約聖書を研究されている御子息の協力を得て今年発刊される予定だという。クリスチャンでもあったご主人の夢が母子の手で果たされることになる。秋吉さんの人生は、冬の星空に似て清澄な輝きがある。(翁)


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Posted by okina-ogi at 07:39│Comments(2)日常・雑感
この記事へのコメント
荻原悦雄様
突然のコメントで失礼いたします。
私はこの「終の住み家・・・−3」で記事にされている秋吉ヨ子の孫です。
もうかなり前の事ですので無理を承知でお聞きしますと
この記事に書かれている以上の内容や写真などの資料はお持ちではないでしょうか?
お返事いただけますようお願い申し上げます。
Posted by rei-to at 2021年10月26日 16:19
恐れ入ります。
ご連絡遅れて申し訳ありません。
一度取材させていただいたこの記事以外には、資料もありません。
御主人である、秋吉少将をこよなく愛しておられたことを印象的に覚えています。素敵な方だったと思いました。
実名で小説を書いている方がおられるそうですね。
お役に立たずあいすいません。
Posted by okina-ogiokina-ogi at 2022年01月25日 15:12
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    コメント(2)