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2013年10月24日

『白萩』(拙著)国内事情Ⅰ

国内事情
 イタリア旅行の余韻が残る、三月一日、日本航空で九州へ飛ぶ。宿泊施設と航空券がパックになっていて、通常航空料金はもちろん、ちょっとした割引航空券よりも安いと思っている。思っているというのは、友人頼みで細かく調べたことはないからなのだが、十分満足している。
 ところが、今回は大変なミスをした。航空券を見たら、席が決まっているので搭乗手続きをしないで手荷物検査の列に並んでしまった。係員から指摘されて、搭乗手続きをしようとしたが機械が受け付けない。しかたないので、カウンターの係員に頼んでみたが、予定の飛行機には乗れないという。せっかく朝早い便を予約したのだが、次の飛行機は、午後一時過ぎになるという。新北九州空港ができたというので、初めて降りてみる好奇心もあったし、目的地が大分県と下関市だったので、地理的に近かったこともあるので、どうしようかと思っていたら
 「福岡空港でよければ、八時三〇分の便がありますが、聞いてみましょう」
と言って問い合わせてくれた。結果は、搭乗できるということであったが、非常口の前で、足も延ばせる場所になった。怪我の功名ということもある。一度あることは、二度あるというが、帰りの福岡空港も、久し振りの友人との再会で話がはずみ、搭乗手続きの時間に間に合わなかった。しかし、幸運にも飛行機が遅れ、予定の飛行機に乗ることができた。機内のアナウンスは、離陸が遅れたことを乗客に詫びていたが、乗り遅れそうになった本人は、感謝の気持ちでいっぱいであった。途中走ったので、胸の動悸がおさまらなかったが、仏の顔も三度までというから、次からは、空港には余裕を持って着くようにしなければと思った。お任せばかりの海外ツアーにすっかり慣れて、一人旅の緊張感がなくなっていた。人頼りはよろしくない。
 
 博多駅から特急に乗って、大分に向かう。目的地は宇佐である。宇佐には、全国四万四千社といわれる八幡宮の総本社とされる宇佐神宮がある。八幡宮は、日本で最も多い神社である。源氏の守護神が八幡大神だというほどの知識しかないが、九州にある古い神社である宇佐神宮は、一度は見ておこうと思っていた。JRの宇佐駅は、鄙の駅のようである。バスを利用したら、次の予定地が見られないと思ったのでタクシーで行くことにした。宇佐神宮には、十〇分ほどで着いた。鳥居をくぐり、橋を渡ると本殿まではかなりの距離がある。敷地は広大である。
 主祭神は、応神天皇(一の御殿)、比売大神(二の御殿)、神功皇后(三の御殿)である。本殿は国宝である。近くに、楠の大木があった。社殿は鮮やかな朱色で、青く澄み渡った空の色と対照をなして実に美しかった。社殿に向かって深々と頭を下げる。拍手の音も良く響いた。神道の単純な礼の形ではあるが、心が静まるのを覚える。イタリアで大聖堂を見て、神社を訪ねてみたら、すっかり故郷に帰ってきた気分になった。人工的な空間よりも、神社のような自然に抱かれ調和した空間に心が癒される。西洋の文化を否定するわけではない。日本民族の固有の文化もまた良い。若い巫女さんが目に入ったので御守りを記念に買うことにした。
 この日は晴れていたが、風の強い日であった。次の目的地に行くための列車の時刻が迫っている。一台空車のタクシーが止まっていた。運転手に話しかける。
「この近くに、戦争中、航空基地があったと思うのですが、どのあたりでしょうか」
小学生の記憶でもしっかりと憶えていた。
「私の家は航空基地のすぐ脇にあって、基地に爆弾が落ちたことも憶えています。多くの兵隊さんが、特攻隊員として訓練した基地だったようですね。ここからは、少し距離がありますが、今はその面影は残っていませんが、掩体壕という飛行機を格納避難させる戦跡が残っています」
 阿川弘之の『雲の墓標』を読んだこともあり、特攻隊として死地につく無念の人生の意味を考えながら、この地で過ごした若者たちのことを思い浮かべた。
 
 宇佐から、中津に向かう。途中右手に双葉山神社が見えた。六十九連勝の記録を持つ大横綱双葉山の出身地が大分だったことを知った。中津は、城下町であったが、城を見るのが目的ではない。豊臣秀吉の名参謀であった黒田官兵衛が築いた中津城は、扇城という別名があり、昭和になって旧藩主であった奥平氏の子孫が天守閣を建築した。堀には海水が引き込まれた水城である。


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