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2013年11月20日

『白萩』(拙著)後記

後記
 生まれ出でて五十六年、荻原という苗字を頂戴している。荻(おぎ)というイネ科の植物なのだが、今もって野に出て、これが「荻」だと認識したことがない。だから、多くの人々も、「荻」という植物を知らないかもしれない。近いうちに、植物図鑑に照らして正式に対面しておかなければならないと思っている。
 それほどに「荻」という植物は、影が薄いが、秋の季語になっている。写真で見ると薄(すすき)に似ているが、少し男性的な感じがする。「萩」という植物がある。こちらは、多くの人に愛されているためか、秋の代表的な植物になっている。
 初対面の人に名刺を差し出すと、八割がた「ハギワラさん」と呼ばれる。返信の手紙にも「萩原様」と書かれる。高校時代、担任の数学の教師が「ハギワラ」というので、何度か訂正してみたが、「ハギワラ」に戻るので、一年間「萩原」になった。もちろん答案用紙には「荻原」と書いた。視覚的に、「荻原」と「萩原」は似ている。
 文字をよく見てみると、萩は、秋に草冠がついている。俳句をしているので、知っているのだが萩の秀句が圧倒的に多い。
 芭蕉の『奥の細道』にも
  一家に遊女も寝たり萩と月      芭蕉
  行き行きてたふれ伏すとも萩の原   曾良
がある。正岡子規から始まる近代俳人も「萩」を季語にした名句がある。それに対して「荻」を季語にした句は少ない。ある書によれば、荻の、風になびく姿が霊魂を招き寄せるという古代の人の感性から「おぐ」が変じて「おぎ」となったと解説している。次の句などは、感じが出ている。
  荻の花揺れて折々むき変り      加賀谷凡秋
万葉集に
  神風の伊勢の浜荻折伏せて
        旅寝やすらむ荒き浜辺に  ※浜荻は、葦の別名
という歌のあることを知ったが、いかにしても「荻」は地味な存在である。家系をたどると農民であったから苗字を持ったのは、明治からであろうが、御先祖さまは、どうしてこの苗字を選んだのか、今は知るすべはない。荻は萩の裏で良い。紀行のタイトルは「萩」に譲ることにした。
 前号の『浜茄子』の後記に、次号はイタリア紀行から始めたいと書いた。三十年ぶりのローマ、ポンペイの史跡はほとんど変わっていない。十一月末には、久しぶりに母校同志社大学の今出川キャンパスを歩いてみたが、こちらも卒業当時とほとんど変わっていない。
 諸行無常が人の世の真相なのだと思うが、古い建物が、個人の生命を超える時間を続けて維持されていることは、時代を超えた懐かしさの源になる。これからも、歴史と人物に惹かれて旅ができると思うが、今生でご縁のある方を大事にしていきたい。裏千家の茶の世界のように一期一会ということで
ある。


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