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2013年12月23日

『侘助』(拙著)配流の島佐渡へ(上)

配流の島佐渡へ
 

 島民の人々からすれば、不快なタイトルであろう。配流、すなわち島流しの意味であるが、権力者の勘気に触れ、古代から佐渡は、貴人、偉人の配流の地になった。八世紀以前、国府が置かれ、佐渡国となっていたが、鎌倉時代、執権北条泰時の時代に起こった、承久の乱に後鳥羽上皇とともに関与し敗れた、順徳天皇は、その代表的人物で、行在所になった真野地区には真野宮跡として、その史跡が残されている。この場所に近年、「佐渡歴史伝説館」が開設され、精巧なロボットにより流罪になった人物の歴史が語られている。日蓮、世阿弥も登場する。北朝鮮に拉致され、帰国した曽我あゆみさんの夫であるジェイキンスさんが販売店でおせんべいを売っている。このことは、流罪とは、関係ないが、佐渡が人間の運命の中で数奇な島となっているという印象を重ねている。
 ここ数年、岡山県在住の友人と、交互に訪ねられたり訪ねたりの旅をしている。彼は、今年で定年になった。当方と違い、時間は充分にある。希望が佐渡であった。我が家に一泊し、翌日佐渡に渡り、最後は、空路岡山に帰らなければならないので、新潟の海辺寺泊を宿泊地にした。名所、旧跡には関心の薄い人で、旅館の食事と温泉に配慮しなければならないと考えていた。今回、それも必要なさそうだと分かった。目的は、語らいと酒と将棋をさすこと。今年の七番勝負は、こちらが片目を空けただけの無残な結果に終わった。こちらの苦渋な心境も察せず、一回負けたと悔しがっている。それに加えて
「佐渡は、とりたてて見所がなかった。一度で充分」
などと、素っ気のない感想をのたまった。寺泊に近い出雲崎に良寛堂や記念館に案内しようとしたが、時間の無駄と言うばかり。佐渡を眺める良寛像を、車窓から眺めた時も
「あれは、唯の人形じゃ。人は、行いと文章、歌で判断すればよい」
したがって、記念館も案内しなかった。月曜日は、休館日でもある。
帰路に着いた日、自宅から電話があった。
「大変お世話になりました。来年はこちらにいらっしゃい。夏ではない方が良いと思うが。家にも泊まってもらってもかまわないから。将棋は、少し練習しておけよ」
最後の一言だけが余計である。
 佐渡にはフェリーで渡る。八月に佐渡汽船が所有する一隻が故障して運休している。運よく一等席が予約できた。所要時間は、新潟港と両津港に二時間半である。途中、イルカらしき姿も見られた。海は穏やかである。デッキに出ると海風が心地よい。この日も猛暑日ではあったが、海上に出ると暑さが凌げている。両津の港に入ると、船の近くカモメが群れをなして飛ぶようになった。餌付をしているのだが、歓迎の乱舞のように感じて少し嬉しくなった。配流の人々とは違う。日蓮が、佐渡に渡ったのは、寺泊からで、着いた地点は、小佐渡丘陵地のある前浜海岸に近い、松ヶ崎あたりだったとされる。しかも、海は荒れていた。しかも小舟である。日蓮がお題目を唱えると海が鎮まったという伝説が残っている。日蓮の宗教は、純粋で他の宗派を批難し受け入れない過激なものに当時の為政者に映った。北条時宗は、滝の口の法難で知られるように、僧侶の身分と知りながら処刑まで考えた。死は免れたが、佐渡に流された。その時、日蓮は、五〇歳を超えていた。流刑地、佐渡の塚原で行った問答の中で
 我日本の柱とならむ
 我日本の眼目とならむ
 我日本の大船とならむ
と信念を言い放った。
その地に建てられた、根本寺にその額が掛けられていた。
内村鑑三が著書『代表的日本人』の中で、日蓮を取りあげている。
 

 我々の乗ったフェリーは、着岸し埠頭に降り立ったが、佐渡も熱い。今宵の宿は、加茂湖畔にある。汽水湖である加茂湖と佐渡一番の高峰である金北山の山並みが美しい。夜は、この湖で養殖された牡蠣が食膳に出た。翌朝五時前に目覚め、ベランダに出ると山の端近くに月が朧に光り、街灯の湖面に映る姿に風情があった。
 佐渡の湖 まだ明けやらず 夏の月
そういえば、芭蕉の句に
 蛸壺や はかなき夢を 夏の月
がある。こちらは、須磨の海岸だったか。少しは、この句に影響されている。


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