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2014年03月18日

雪国対局(2014年3月)

雪国対局
 「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」
という文章で始まる川端康成の小説「雪国」は、戦前に発表された小説だが、当時の清水トンネルでは国境を越えて雪国にはいけない。雪国から「空っ風の国」へ行くことはできる。戦後、新清水トンネルが開通して下り専用の列車が走るようになった。康成が、雪国の温泉地に滞在した頃は、清水トンネルが完成したばかりで、電化されていた。蒸気機関車が黒煙をはいて長いトンネルを走ることは不可能であったからである。小説の冒頭に書いた文章は、川端康成のいつわざる新鮮な実感としての表現とも言える。
 現在では、上越新幹線が開通し、群馬県の上毛高原駅から越後湯沢間は、一五分程度に短縮された。湯沢町は、温泉地ではあるが、冬場のスキーを楽しめる一大リゾート地となっている。リゾートマンションが林立し、鄙びた温泉町に都市が出現した感じである。湯沢温泉には、これまで宿泊したことがなかったが、静岡の友人が春休みを利用して十日近く、湯沢町に宿泊することになり、会う事になった。
 彼は不動産にも関心があり、生業にはしていないが宅地建物取引主任の資格を持っている。越後湯沢近辺のリゾートマンションは、需要が少なく非常に安くなっているという。不動産屋のパンフレットを見ると二十万円台の物もある。こんな値段なら買っておいて、温泉やスキーを楽しもうと思う人もいるだろう。一戸建ての別荘ではないが、余暇の有効利用もできると思うが、なかなか売れない。管理費が馬鹿にならないのである。最低月額二万円程度の費用がかかる。それなら、ホテルに泊まった方が良いと考える。月に二回以上を泊まらないと得にならない。しかもホテルならば食事付きである。
 
 日曜日、朝食を済ませ、高崎駅を十時四十分位の列車で越後湯沢駅に向かう。所要時間は三十分である。なんとも便利である。二泊して朝職場に出勤することも可能である。昼前に着いた越後湯沢の周辺の山々も、三月半ばというものの雪を湛え、市街地の道路は除雪されているが、屋根に除雪しない雪が積もっている家も多い。駅構内に「雪国」の駒子の人形があった。近年、駅の売店も広く整備され、新潟の土産物を売っている。日本酒、米は、新潟県が誇る物産である。
 友人が長く滞在しているホテルは、上越線中里駅に近い。越後湯沢駅とホテルの間を一時間おき位にシャトルバスを運行させている。ホテルの食事に飽きたら、駅や駅前の食堂を利用することもできる。周辺のスキー場にも駅を拠点にすれば出掛けていくことができるが、ホテルの前が直接経営するスキー場になっている。温泉の大浴場と温水プールまである。このホテルは、マンションとホテルが同居している。マンションとして売れない部屋をホテルとして利用している。どの部屋に所有者がいるのかはわからない。中に自分の家具を持ちこんでいる違いはあるが、宿泊室と構造は同じである。浴室、トイレ、キッチンがあり寝室を兼ねたリビングは広い。
 三時にチェックインを済ませ入浴を済ませ、夕食の前に将棋の対局になった。大学時代、将棋のクラブで勝負を競った仲である。社会人になって二人とも将棋から遠ざかっていたが、還暦を前後して再び将棋を指すようになった。棋力は大分当時と比べれば落ちてきているが、お互いいい勝負になる。勝敗を気にしないと言えば嘘になるが、一手一手の応酬が無言の会話になっている。手談という言葉が碁にはあるというが、将棋も同じである。親友との対局はそれが楽しい。
 将棋をさし始めると、雨が降り出し、次第に霙にかわり夕方近くになって雪になった。
まさに雪国対局になった。将棋には、序盤と中盤と終盤があるが、数局とも中盤まではこちらが優勢になる。友人は、詰将棋を良く解いていた記憶がある。その学習が終盤に発揮されるのかと思った。駒を沢山持っていても詰まされれば負けるのが将棋である。碁のように序盤のリードが勝利に結びつきやすいゲームとは少し違っている。表現はきついが王様の首をとった方が勝ちなのである。
 最初の一局は、終盤まで大分有利な展開になっていたが、最後で詰み筋が見えず詰まされて負けになった。友人も自分が勝ったことにビックリしていた。勝負は最後の最後までわからないということを身に沁みて体験した。その夜は、どうしたら詰むかを考えていたら寝付けなくなった。一種の不眠症になった。悪い言葉で言えば執着である。彼の方は、大リーグ中継を楽しみながら安眠できたに違いない。翌日雪辱を果たしたが、雪国対局は皆熱戦になった。
 家に帰り、その一戦一戦を並べ直している。相手にもミスがあり、こちらにもミスがある。そして好手もあることに気づくが、一手一手の判断の結果である。将棋に待ったはない。その時の読みと大局観が指し手を決めている。
 一局目が自分にとってあまりにも衝撃的な将棋だったので、局面を序盤、中盤、終盤に分けて写真をとり、自戦記を書いてフェースブックに載せることにした。もちろん友人には許可をとり、匿名にすることが条件である。


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