☆☆☆荻原悦雄のフェイスブックはこちらをクリック。旅行記、書評を書き綴っています。☆☆☆

2014年03月25日

世紀の日本画展(2014年3月)

 

 東京の上野公園にある東京都美術館で特別企画展「世紀の日本画」が開催されている。岡倉天心が中心になって結成された日本美術院の流れを汲む日本画が展示されている。前期と後期で作品が入れ替わるが、後期を鑑賞した。横山大観の「無我」と「屈原」を見たかったからである。「無我」は、一度島根県にある足立美術館で見たことがあるが、解説では東京国立博物館蔵となっているから、たまたま足立美術館に貸し出されていたのを見ることができたのであろう。切手にもなっていて、童子のあどけなさが「無我」というテーマにぴったりな感じがする絵で大観二九歳の作品である。
 屈原の原画を見るのは初めてだと思う。厳島神社蔵となっているから、横山大観展でも企画されなければなかなか目にすることはできない。かなり大きな作品で、激しい風の中に毅然と立ち、髪が乱れている屈原の姿に悲壮感を感じる。どこか、師である岡倉天心の姿を彷彿させる。事実、根拠のない理由により岡倉天心は東京美術学校の校長を免職された。そのこととこの絵は、無関係ではないと音声解説のテープにも流れていた。右手に持つ植物のことも解説がなければ気づかない。蘭の花は、高潔さを表している。
 屈原は、楚の政治家であったが、讒言によって左遷され、国の行く末を憂い、汨羅江に身を投じて死んだ人物である。漢詩「楚辞」を遺している。日本画に西洋の絵画の手法を取り入れた最初の絵とされる狩野芳崖の「慈母観音」も見ることができた。もっと色鮮やかな絵と思っていたが、意外に渋い感じがした。この絵を狩野芳崖は、完成させることなく朋友の橋本雅邦が引き継いだとされるが、狩野芳崖作といって問題ないようだ。岡倉天心は、多くの芸術家を育てたが、弟子達は、彼の思想の高さに共感したのである。その一つに、歴史に題材を求めることがあったようだ。その一人に、安田靫彦がいる
 「額田王」は、彼の代表作である。教科書に良く載る絵である。切手にもなっている。天武天皇の妻とされている女性だが、万葉集に載っている歌は不思議な歌である。
 茜指す紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
紫野という地名は懐かしい響きがある。京都の大徳寺近辺が紫野である。この歌が詠まれた場所かどうかは確認していないが、学生時代下宿したところである。今回は展示されていなかったが、安田靫彦には良寛さんを描いたものがある。出雲崎の良寛記念館で見たが、本物であったかわからないが、安田靫彦は良寛研究家としても知られている。鼻筋の通った良寛さんが印象的である。良寛さんの肖像が残っているわけではないのだから彼のイメージである。晩年の良寛さんを描いているが、いつしかこの絵の良寛さんが頭に沁みついてしまった。
 前田青邨、菱田春草、下村観山の巨匠の絵も展示されていたが皆個性的である。菱田春草は、比較的短命の画家であるが、岡倉天心や横山大観らと茨城県の五浦の海岸に居を構え、画業に専念した時期があった。海岸近くに建てられた六角堂は、東日本大震災の津波で流されてしまったが、つい最近復元されたというニュースを聞いた。
 絵画ではないが彫刻家では平櫛田中の作品があった。菱田春草とは対照的に、一〇七歳の長寿であった。五浦には、釣りをする岡倉天心の立像があったし、天心の座像などの作品がある。広島の福山市の出身で、婿に入った人でどちらが旧姓か忘れたが、田中を(でんちゅう)と読ませている。
 久しぶりの東京都美術館訪問となったが、改修され、エレベータを使って各会場を移動することができるようになっている。地下ロビーの片隅に置かれた佐藤慶太郎像も一階ロビーに移され、説明板が整備されていた。朝倉文夫の創作したものだが、最初の美術館の建設に多額の寄付をした九州の実業家である。


同じカテゴリー(旅行記)の記事画像
上野界隈散策(2017年10月)
九州北岸を行く(平戸、武雄温泉編・2017年8月)
九州北岸を行く(唐津編)
春めくや人様々の伊勢参り(2017年4月)
東京の桜(2017年3月)
三十年後の伊豆下田(2017年3月)
同じカテゴリー(旅行記)の記事
 上野界隈散策(2017年10月) (2017-10-20 11:16)
 この母にこの子あり(2017年9月) (2017-09-12 17:44)
 九州北岸を行く(平戸、武雄温泉編・2017年8月) (2017-08-26 09:04)
 九州北岸を行く(唐津編) (2017-08-25 17:19)
 春めくや人様々の伊勢参り(2017年4月) (2017-04-04 17:56)
 東京の桜(2017年3月) (2017-03-27 16:36)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
世紀の日本画展(2014年3月)
    コメント(0)