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2014年05月29日

『東京震災記』田山花袋 河出文庫 570円(税別)




東日本大震災から3年ほどしかたっていない今日、90年以上前に起こった関東大震災のことは、比較されているが、作家が残した関東大震災の様子を伝える記録の存在は、それほど話題に上った記憶がない。『東京震災記』は当時、作家として知られていた田山花袋が書いたものである。東京近郊に住んでいた田山花袋は、焼け野原のようになった東京の中心部を、震災直後目にしている。ただ、惨状というべき東京の街を見ながら、物書きとしての本性が、文章を書かせている。しかし、感傷的ではなく、表現も心の不安や、悲惨な状況(死人が街中に放置され、異臭を放っているような)から受ける絶望感も抑制して、写実的に書いている。写真が伝えるように、実像的である。
印象に残ったのは、情報がなく、人々の風聞に混乱する様子である。東日本大震災での津波の被害は、空からの映像として放映された。阪神大震災の時もそうだったように、日本に滞在していた外国人の眼から冷静でお互いを助け合い、しかも外国人にも親切だったという共通点である。ただ、社会主義者や朝鮮人の不穏な行動が誇張されて、被災者の不安をあおったことも書かれている。
田山花袋は、群馬県館林の出身だが、若い時から東京に住み、町並みの移り変わりを見ていたので、東京に愛着があった。焼け跡に、昔の思い出を重ねる表現がそこかしこに出て来る。貴重な震災記録になっている。


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