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2014年06月04日

『春』島崎藤村著 新潮文庫 590円(税別)




久しぶりに、島崎藤村の小説を手にした。タイトルがすっきりしているが、内容は青年時代の島崎藤村の苦悩が書かれている。古典と言われるような小説を読むのは、何十年ぶりという感じで、数学や俳句から遠ざかった人間のように、その世界にしたる感覚がなかなか戻ってこないのには、閉口した。
島崎藤村には、関心があるがその生涯と文学作品には、あまり触れていない。『破戒』と『夜明け前』は、読んでいる。文学に関心が強かった高校時代の頃だから、読後感はとうに消え去り、あらすじなどは覚えていない。
たまたま、群馬県立土屋文明記念館で田山花袋の企画展が開催されており、図書のコーナーにこの本があったので、手にしたということに過ぎない。同じ自然主義文学者でも、田山花袋の『蒲団』は読む気がしなかったのでこの本に手が伸びたのかもしれない。
今年の元旦、大磯に行き、島崎藤村が晩年過ごした家の前を通ったことも、まんざら無関係ではなさそうである。あまり深入りはしなくても、もう一冊くらい彼の小説を読んでも良いと思うようになった。『桜の実の熟する時』という作品である。
小説『春』に登場する人物は、明治女学院で教師をしていた頃の友人達で、とりわけ北村透谷と教え子の佐藤輔子の存在が大きい。透谷は、自殺。輔子は病死。二人の大きな存在を失った藤村の苦悶が描かれており、文学者として生きていく決意も感じられる小説になっている。もちろん、登場人物は実名で出てくるわけではない。


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