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2014年09月27日

『まだ見ぬ故郷』 長谷部日出雄著(上巻)新潮文庫



戦国時代のキリシタン大名として知られている高山右近の生涯を描いた小説である。既に加賀乙彦の高山右近を読んでいるが、あまり印象に残っていない。おそらく、途中で読むのを止めているかもしれない。大河ドラマ「軍師官兵衛」に登場し、その人なりが気になって読んでみようと思い立った。吉川英治にも高山右近を描いた作品があるようだが、毎日新聞に連載されたというこの作品を選んだ。下巻もあるが、上巻を読了した。
高山右近は、両親がキリスト教を信仰したことにより、10代で洗礼を受けている。性格的には、生真面目さがあり、人徳もあったというから、キリスト教に体質があっていたのかもしれない。千利休の高弟の一人であり教養人であったことは確かだ。武士の家に生まれ、戦国の世を生き抜くための知恵、政治家としての力量、とりわけ、武人としての才能もあった。信長や秀吉に能力を買われたのは、この面に比重が置かれている。大河ドラマ「黄金の日々」にも高山右近は登場するが、信長に身一つで投降し、対話する場面は、印象的だ。役者も台詞も素晴らしい。
上巻のクライマックスでもある。荒木村重が信長に反旗を翻したことにより、高槻城主であった高山右近は、信長と戦うことになるが、荒木村重に信長と戦うことを止めるように進言している。勝ち目がないと考えたからである。武人としての政治家の判断である。しかし、荒木村重は、高山右近の意見を聞き入れない。子供を人質にされ、信長からは、多くのキリシタンとなった領民や宣教師を皆殺しにすると迫られ、右近が出した結論は、世捨て人になって、自分が犠牲になることにより信長の前で嘆願することだった。そして、信長からは、自分の目指す天下布武のために部下となれと言われる。信仰も捨てなくとも良いし、更なる布教も許すという。
再び、高槻城主となるのだが、信長と右近と似ている部分を感じた。それは、自分が正しいと思うことを貫く点である。信長は手段を選ばず、天下を目指すために障害になれば、躊躇せずに殺戮した。比叡山の焼き打ちなどは、当時としては驚愕する行為である。法華宗の僧を他宗派に排撃的だと大衆の前で首を刎ねる描写もあった。キリスト教も基本的には一神教であり、違う宗教感や価値観を持つ者には、排他的に感じることがあるかも知れない。純粋さの中にある危険というものもある。信長は、本能寺に死に、右近はマニラに追放され病死した。


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『まだ見ぬ故郷』 長谷部日出雄著(上巻)新潮文庫
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