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2014年10月09日

『評伝 岡潔 星の章』高瀬正仁著 海鳴社 4000円+税



2003年の出版である。その後『評伝 岡潔』は、3冊の続編が出た。いずれも大作である。2014年になって『紀見峠を越えて』の回想編が出て、岡潔の評伝は完結したように見える。最初の評伝が世に出る前に、著者から活字になった草稿が送られてきたことがあった。10年近い、地道な取材の旅があったのである。関係者に会い、資料を提供してもらい、足跡も訪ねている。著者も数学者であり、専門分野も多変数関数論で岡潔と同じで、数学史上、世紀の大発見とされる岡潔の論文の内容も解説している。
 岡潔は、文化勲章受賞後は、数学の研究から離れ、心の真相を世に書物や講演で語ることに命を注いだ。面会を求める者は、区別なく自宅で直接会い、私見を語った。私もその一人で、亡くなる1年前であったが強烈な印象を受けた。岡潔は、自伝を書いているわけではないが、人生の生い立ちから、数学研究の歩みを著書に残している。著者もそれを手がかりにして、岡潔の生きざまを調べ、評伝として描いた。小説ではないが、主観が入るのは当然であるが、この評伝の圧巻は、若くして亡くなった考古学者中谷治宇二郎との友情を記した部分である。
 岡潔は、京都帝国大学を卒業後、同大学の講師をした後、フランスに4年留学した。留学中に出会った中谷治宇二郎は、無二の親友になった。この人は、物理学者で雪の研究で知られる中谷宇吉郎の弟である。岡潔は、中谷宇吉郎とも親交があった。共に生活することもあったが、中谷治宇二郎は、病になり、そのため岡潔は留学を延ばしている。経済的援助もしている。学問の理想を語り合える友としてかけがえのない存在だったのである。帰国後も友情は変わらず、中谷治宇二郎が療養する由布院に何度も訪ねている。最後の別れとなった時に中谷治宇二郎が詠んだ句がある。
 サイレンの丘越えて行く別れかな
今回、福岡で著者に会い、二人の友情の深さについて痛く共感するところがあった。改めて11年前に手にしたこの本を再読し、二人の友情を想像して見たのである。著者に会った翌日、由布院に行く予定は、台風のため実現できなかったが、いつかは訪ねたい。


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『評伝 岡潔 星の章』高瀬正仁著 海鳴社 4000円+税
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