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2014年10月23日

温泉対局(2014年10月)

温泉対局(2014年10月)
 

四万温泉は、群馬県中之条市の奥まった山峡にある温泉地で古くから知られている。温泉街の前を四万川の清流が流れ、上毛カルタには、「世のちり洗う四万温泉」と詠われている。昨年、静岡に住む友人が、将棋の宿があるから泊まりに行かないかと誘われた。〝灯台もと暗し〟である。群馬にいながら四万温泉に泊まったことはなかった。旅館の名前は、唐澤旅館と言って、プロ棋士の色紙があるところを見ると、将棋愛好家だけでなくプロ棋士が泊まっていることがわかる。碁盤も置かれていて、囲碁・将棋の宿という言い方が正しい。宿の主人は、囲碁の高段者で昨年は、三子で御指導いただいた。
 昨年、二泊三日だったので、棋友とはゆっくり将棋が指せた。宿は古いが、家庭的な感じがあり、宿泊客が我々だけだったこともあり、相部屋にならなかった。風呂も家庭風呂のようで、好きな時間に入ることができた。食堂を兼ねた広間に、プロ棋士の創作した詰将棋の色紙が飾ってあって、詰み手を発見しようと、挑戦してみたがどうしても解けずにいた。自宅に帰り考えていたらどうやら解けた。しかし、正解かどうかは、確信がなかったので、今回主人に確認しようと思っていた。
 詰む場所が、色紙の盤面にはなく驚いたことに9一という場所で詰むのである。なんと29手詰めである。正解手順の控えがあるというので、早速確認したところ見事正解である。二人目の正解者ということだが、最初の宿泊の時解けたわけではないから、数にいれなくても良いと言うと、答えを教えたわけではないから二人目ということで承認してもらった。
 詰み手順を解説付きで書くことにする。初手は●3一銀(1)である。後手は、1三に玉が逃げると、2二に銀を打たれて早詰みになってしまうので、玉は1二に逃げることになる。3手目は、●2二金(3)である。同銀とは取れない。これも早詰みとなる。○1三玉(4)と逃げて●2三金(5)と歩を取る。○同玉(6)の一手となり、2四から銀を打つ。3二に玉が逃げると3三銀と取って、これまた早詰み。○2四同銀(8)と取る。次の手は、最後の銀を3二銀(9)と打つ。同玉と取ると、早詰みとなるので、○1三玉(10)と逃げる。●1二銀(11)と王手に捨て、○同玉(12)と取らせる。●2一飛成(13)と王手とし、○3三玉、(14)●2三龍(15)、○4二玉(16)となる。この時点で持ち駒は、桂と歩である。●4四桂が好手で、ここから王様一人の逃避行になる。ここまでの手数は、十七手。以下は棋譜だけ書く。色紙の図面から消えて行くのである。○5二玉●4三龍○6一玉●6三龍○7一玉●6二桂成○8一玉●7二成桂○9二玉●9三歩○9一玉●7一龍までの二九手詰めである。
 詰将棋の図面がないので駒の配置を記すと。後手方、1一香・1四歩・2一桂・2二玉・2三歩・3三銀・3四歩・4四歩。先手方2五歩・4一飛。持ち駒は、金、銀、銀、銀である。将棋盤に並べてから考えてみてほしい。
 岡山の友人は、飛行機と列車を乗り継いで、安中榛名駅に下車。自家用車で迎えに行き、八場ダム工事地を案内し、四万温泉までのドライブになった。記念館や娯楽施設には興味のない人で、紅葉の始まった群馬の自然を見てもらうだけにした。昼飯は、東京駅で食べたらしく、ついでにビールも飲んでいる。宿に早く着いてゆっくりしたいのだろうと思ったが、一か所だけ倉渕町の落合にある道祖神に立ち寄った。江戸時代の物で、短い時間だがまんざらつまらない物を見せられたという印象はなかった。
 紅葉して和合日和や道祖神
 旅館に着いたのは四時過ぎで夕食までには時間があるので、温泉に入ることにした。夕食後は、将棋対局になった。軍師官兵衛が見たいと言うので、対局は、二局。ドラマの前の一局はこちらの勝利。ドラマの後は接戦になったが、持ち込んだお酒も飲んで、最後のあたりは指しかけにして就寝。朝再開したが、一手でこちらが投了。どうやら昨夜の局面で勝ちはなかったようだ。数手前に敗着があったことに気づいたが後の祭り。飲んでの将棋は駄目と思うが、相手も飲んでいるのだから条件は同じである。実力は彼の方が上なので、指し分けで良しとしたい。
 四万温泉からは、中之条の市街を経由し、沼田市から次の宿泊地の水上温泉に向かう。旅館は、三時からチェクインなので時間は充分ある。土産物と思うが適当なものがない。
「群馬で土産にするものは何もない」
これは、友人の弁である。言い過ぎだと思うが、こんにゃく、うどん、饅頭などには興味なさそうである。街道沿いにリンゴがたわわに実っていたのを思い出したのか、四万温泉の旅館の主人の親戚のリンゴ農園に予約して、宅急便で箱詰めのリンゴを送ることにした。農園の名前が小渕農園。朝刊をみたら、小渕優子大臣が辞任したという記事が一面に出ていた。彼女の選挙区であり、中之条市が地元になる。政治とカネの問題での辞任というが、不祥事はなかなか絶えない。
赤く熟れニュートンを待つ林檎かな
ただこの句は、農園の人にとってはいただけない句である。地にリンゴが落下してしまえば価値がなくなる。落下する前に収穫しなければならない。それに、どことなく川柳っぽい。林檎を購入したのが、小渕農園であったこともあり、小渕大臣の辞職のことと絡めた句ということにして
赤く熟れニュートンを待つ優子りん
と言う句は、あまりにも揶揄し過ぎている。
当日の新聞の広告に載った某週刊誌には、群馬県と茨城県が知名度の低さで全国最下位を争うなどという記事が載っているが、岡山県も四〇番台だと、お互いの県を貶し合うようなことは止めようと旅行中の申し合わせにした。
温泉対局(2014年10月)

 岡山県の山と群馬の山の印象は極端に違うという。群馬の山は急峻で、しかも独立峰になっているものが多く、山では群馬に負けると認めている。それならばと、谷川岳が近くに見える場所へと案内しようと思い、ロープウエイで天神平の展望台に登った。小雨が降り、嶺は霞がかかることもあったがはっきりと稜線が見えた。途中の紅葉も美しかった。
水上の温泉宿は、昨日とは変わって大きな旅館である。今晩は、将棋の対局はしない。この宿は、水上でも古く、芸術作品が多く置かれていることも特徴があるが、大浴場や露天風呂も凝っている。建物の下には利根川が流れている。対岸の欅も紅葉して美しい。朝、水上の町を眺めると周囲の山に霧が立ち登り、谷川岳は見えなかったが、友人にも満足してもらえる宿泊地になったと思う。来年は、日光に行きたいという。「日光に行かずして、結構と言うなかれ」である。後日、友人から手紙ともに俳句が五句送られてきた。二句は文中で紹介したが、他の三句は
かりがねの通いし空のうすみどり
佳句だと思う。
みどり児の夢の扉たたけ雁渡し
新蕎麦や酒と老婆と雨催ひ
昼食に、天ざる蕎麦を註文したが、手打ちであったこともあり満足してもらえたようだ。


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Posted by okina-ogi at 06:43│Comments(0)旅行記
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