2014年11月10日
『嬉しうて、そして』 城山三郎著 文芸春秋 1429円+税
城山三郎は、2007年に亡くなっている。城山三郎著となっているが、遺族が編集して出版したものだ。城山の生い立ちから亡くなるまでの様子が、巻末に年譜があるのでよくわかる。終戦間際だったが、海軍に志願して入っている。この経験が、作家になった動機の一つになっている。
作家になる人と言うのは、読書量が多いのは、当然としても、資料集めのための取材も半端ではないと思った。城山三郎と同じ年に生まれた吉村昭とも友人のようだが、取材をした後に作品を書くという点については、共通している。二人の作品は、結構たくさん読んでいる。
城山三郎は、戦後の経済界をリードしたリーダーを描いているが、公を優先して私欲が少ない人物ということで共通している。それに、作家仲間と積極的に交流していない。社交的でなかったということではないが、自分の領分を良く知っていた作家だったのだろう。晩年妻に先立たれたが、子どの世話は受けていたらしい。その娘があとがきを書いている。単行本の帯には、「自分のやるべきことはやり遂げた。この一言を残して世を去りたい」と書いてある。
Posted by okina-ogi at 09:13│Comments(0)
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