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2015年01月02日

元旦の湯河原(2015年1月)

 一〇年来、元旦は日帰り旅行と決めている。多くの人は、家で家族と団欒しながら茶の間でテレビなど見て過ごしているのだろうが、いろいろな正月の過ごし方があっても良い。以前は、元旦パスなどという格安切符があって、東北の日帰り旅行も可能だった。近年は、青春18切符を利用しているが、行く先は関東近県になる。昨年は、大磯だったが、今年は少し先にある湯河原温泉にした。温泉地熱海の一歩手前になるが、多くの文人達が愛した保養地でもある。静岡県だと思っていたら神奈川県である。下足柄郡にあって、湯河原町である。市ではない。町営の日帰り温泉「こごみの湯」で、体を休めることにした。友人を伴って、朝六時の出発の予定だったが、大晦日の家族団欒が過ぎたのか、家の前を通過している七時前の新幹線の音に目が覚め、高崎駅九時の出発となった。
 天気予報で、積雪の可能性もある。正月三日の雪は、「御降り」という。
御降りも亦良き朝の道すがら
という句もだいぶ昔のものだから久しぶりの体験になる。しかも温暖の地である。在来線の湘南ラインを利用し、小田原まで乗り換えなしである。都心で乗り換えずに済むのが良い。グリーン券を購入して指定席を確保。せめてもの贅沢である。出発が遅れたために、小田原で昼食。温泉地でゆったり過ごせるはずだったが、友人には悪いことをした。寝坊するといけないので徹夜したというからなおさらである。晴れ間はあったが、暗雲が迫り、小田原城も落城の感ありで、細かな雪の粒が落ちてきた。小田原から湯河原駅までは近い。

 
 湯河原というと、昭和一二年の二月二六日に起こった、青年将校のクーデターで、牧野伸顕が遭難しかけた場所だと言う記憶があった。湯河原駅からバスを利用し、万葉公園入り口で降り、橋を渡り坂道を登り、目的地の「こごみの湯」へ歩いて行くと、途中に、その遭難の地の史跡と、説明書きがあった。友人も調べて、この日帰り温泉を決めたわけではないのでビックリしている。
牧野伸顕については、説明がいる。明治維新の元勲である大久保利通の次男で、吉田茂首相の岳父である。麻生太郎元首相の曾祖父にもあたる。昭和天皇の信任が厚く、軍部からは、「君側の奸」と見られ、命を狙われ、とうとうそれが現実になったのがこの場所である。当時の建物は、襲撃によって焼かれ残っていないが、遺品などが展示されているという。この日はもちろん閉館になってそれらを見ることはできない。光風荘といって、老舗旅館伊東屋の別館であった。伊東屋は、今も坂下にあって和風建築の立派な宿になっている。牧野は、襲撃の情報を得ていたらしく、事件当日に避難していたとされるが、察知され襲われた。首謀者となったのは河野壽大尉という人で、八名で急襲した。護衛の巡査(殉職)に撃たれ重傷を負ったが、刑に服さず数日後自決した。家は焼かれ、地元の消防団も駆け付けたが、その団員の中にも傷ついた人がいた。牧野の孫である麻生財閥の妻になった和子もいて、彼女の勇気と機転によって、牧野は助かったとされる。その場面は、家が炎に包まれ、崖をよじ登って逃れようとした時、炎に照らし出され、襲撃者の目に牧野が浮かび上がった時、和子は前に立って和服を広げ祖父を隠したという。その健気な勇気に銃の引き金を引けなかったとされる。

 
この経緯は、母親から聴かされているかはともかく、息子である麻生太郎元首相は知っているに違いない。もしここで母親が銃弾に倒れていれば、彼は生まれていないのだから。青年将校の憂国の熱情は認めても、武力によるしかも暗殺という手段は受け入れられない。「君側の奸」と見られ殺害された、高橋是清、斎藤実、渡辺錠太郎という人々は、見識の深い人々であり、私利私欲から程遠い人物であった。牧野伸顕は、戦後柏市に住み、最後まで皇室の行く末を心にかけながら、昭和24年に亡くなった。ほとんど、資産を残していなかったという。借財を残した、父、大久保利通に似ている。
 「こごめの湯」は、元旦というのに大勢の人が訪れていた。湯船も洗い場も満員状態。美肌の湯と言うだけあって泉質は良い。温度も適温でゆっくりと浸かって体を休めることができた。長居はできなかったが充分名湯を満喫することができた。帰路、雪が本格的に降り出した。東海道沿線の家々の屋根も夕刻で薄暗くなっているが、白くなり始めているのが解る。この分だと、群馬も雪が積もり、家までたどり着くのに難儀になるだろうと思ったが、娘に迎えを頼むと雪の話は出ない。無事帰還となったが、光風荘を見たからというわけでもあるまい。


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