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2015年08月15日

「裁くな、裁かれないために」

聖書の言葉である。『長英逃亡』を読了。6年4か月の逃亡生活は、常に捕縛される重圧感を読者まで感じさせる。高野長英が、終身禁固刑によって牢に繋がれたのは、幕府の鎖国政策によるが、一人の人間が大きく関わっている。鳥居耀蔵である。一蘭学者が、政道に口を挟むことは許されない時代だったかも知れないが、永牢というのは、厳しすぎる。当時、そう思った幕府の要人もいたに違いない。鳥居耀蔵は、老中の水野忠邦に高野長英の罪の重さを強く迫ったという。できれば、死罪にしたかった。裁きの時、鳥居耀蔵は、薄ら笑いを浮かべたと、吉村昭は書いている。
 劣悪な獄にあって5年も耐えたが、保釈される可能性はなく、脱獄する決断をする。オランダ語を翻訳することが、天命だと考え、牢の中ではできないと思ったからである。国防のためになる兵学書の翻訳である。長英が、脱獄した2ヵ月後には、鳥居耀蔵は、失脚する。もう少し我慢すれば、保釈されていたかもしれないと、自分の悲運を嘆くが、後戻りはできない。逃亡と言う大罪を背負うことになったのである。鳥居耀蔵に裁かれたための因果である。
 鳥居耀蔵は、晩年まで幽閉され、復権することはなかったが、明治まで生きた。後世に残した印象は言うまでもない。高野長英を裁いた鳥居耀蔵は裁かれたのである。


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