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2015年10月07日

『台湾を愛した日本人』古川勝三著 創風社出版 2200円+税



日本が台湾を統治した時代があった。帝国主義時代の植民地には違いないが、日本は多額の投資をしている。その一つが、灌漑を目的にしたダムである。当時、東洋一の規模を誇った。このダムに中心的な役割を果たした人物が八田与一である。金沢市を訪問した折、「金沢ふるさと偉人館」に立ち寄った時、八田与一のコーナーがあった。司馬遼太郎の『台湾紀行』でその存在を知ったが、郷土の偉人に入っているとは思わなかった。早速、館内に置かれていた評伝を読むことにした。
八田与一は、東京帝国大学の工学部を卒業し、台湾に渡る。現地調査、そして計画を若いながら任され、苦難を乗り越え10年の歳月をかけて完成させた。それゆえ八田ダムと言われている。その結果、台湾の広大な地域が、豊かな農地となった。大正から、昭和初期にかけてのことである。今でも、この恩を台湾の人は忘れていない。それを象徴するのが、八田与一の像が、今日も関係者によって大事に残されている事実である。


戦中は、物資不足で、多くの日本人関係者の彫像は供出され、敗戦後は、撤去された。しかし、この像だけは残った。ダムの恩恵を受けた人々が守り続けていたのである。政府の許可を得て、この像が、八田与一が完成させたダムの近くに設置されたのは、昭和50年代のことである。像を見ると、立像ではない。思索しながら、作業着で現場を見ている姿である。最初にこの像が置かれていた写真を見ると、石が転がっている場所に、鉄棒で固定されたというものであった。こんな像を見たことがない。
八田与一は昭和17年に大洋丸という大型客船に乗っていたとき、アメリカの潜水艦に撃沈され死亡。妻は台湾から引き上げる寸前、夫の完成させたダムに身を投げて亡くなった。8人の子供を残して。光と影の人生はドラマチックである。最近、虫プロダクションによってアニメ化された。


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『台湾を愛した日本人』古川勝三著 創風社出版 2200円+税
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