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2016年04月23日

『上野三碑を読む』熊倉浩靖著 雄山閣 1480円(税別)



上野三碑が世界記憶遺産の推薦リストに選ばれたという記事を新聞で見た時、意外と早いという印象があった。この運動に関わっている著者のシンポジウムに参加したのは、昨年の春のことである。こちらが知らないだけで、地道に運動は続けられていたのである。
上野三碑は、高崎市のごくごく近い場所に固まるように立っている。しかも著者の住まいに近いのである。古代史の研究者であり、郷土群馬をテーマにしている著者にとってやりがいのある課題になっている。
高崎の俳人、村上鬼城の句で
生きかはり死にかはりて打つ田かな
というのがある。高崎周辺の農家は、畑に桑を植え、田には稲と麦を植えた。この句は、冬を越す麦を農民が土に根付かせる情景を詠んでいる。榛名山や遠くに赤城山も見える田園風景が浮かんでくる。振り返れば、上野三碑のある落葉した木々のある里山もある。人の歴史も長いが、「生き変わり死に変わり」して世代交代し、記録、記憶に残るだけである。しかし、上野三碑は、当時の姿をとどめているのである。榛名や赤城の山々のように。加えて、当時刻まれた文字が消えずに残っている。そういうことに、著者は何よりも感動しているのである。
その文字を読み解くことによって、碑を残した人の心や、当時の社会を想像し、理解することができる。まさに、上野三碑は、古代への貴重な窓になっている。現在、上野三碑は、建物の中に保存され、我々はその建物の窓から碑を眺めることになるが、本著は、碑文を丁寧に、繰り返し、繰り返し読めるように解説している。教科書のようである。この本を持って、日帰りで歩いて見て廻ることも可能かもしれない。今は、若葉の季節である。山も笑っている。


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『上野三碑を読む』熊倉浩靖著 雄山閣 1480円(税別)
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