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2016年08月20日

『安曇野(四部)』臼井吉見著 筑摩書房



夏の暑さと、資格試験の時期で、すっかり筆不精になってしまっている。7月末の安倍川の花火の感想以来、拙ブログもそのままになっている。小説『安曇野』も四部まで読了した。四部は、大東亜戦争の終戦で終わっている。たまたま、古本で『安曇野』の単行本が全五巻揃い、安く売り出されていたので購入した。文庫本の1巻は、我が家に避暑?に来た友人に謹呈し、大作に望んだのだが、なかなか先に読み進めない。
読書する人間側の心境にもよるが、明治、大正、昭和の政治、経済、文化、思想を多くの歴史上の人物を登場させて語っている臼井吉実の評論家的態度のためだと感じた。その人物の立ち居地や思想で歴史観は変わっていくのは、当然である。2人の人物を挙げてみたい。
一人は、清沢洌である。安曇野の農民に生まれ、同郷の教育者井口喜源治の研成義塾に学び、体一つで渡米し学問を修め、帰国後ジャーナリスト、評論家として活躍した人物である。終戦の年に55歳の若さで亡くなったが、自由主義平和論者と呼ばれるように、戦前、異質ともいえる言論人であった。思想的には、戦後、首相になった石橋湛山に近い。先の大戦は、無謀な戦争であり、日本の敗北を予言していた。作者、臼井吉見も郷土の先輩言論人として尊敬している節がある。
もう一人は、ビハリ・ボースである。新宿中村屋のインドカリーは、この人の発案ということは知られているが、インド独立運動の志士という面は影が薄くなっている。日本に亡命し、右翼の大立者遠山満や5・15事件で暗殺された犬養毅らとの関係を持った人物である。相馬愛蔵、相馬黒光夫妻の長女を嫁にもらい子供までなしている。ボースも戦時中に亡くなる。チャンドラ・ボースと紛らわしいが共にインド独立運動に命を掛けた生涯では一致している。ビハリ・ボースからすると、日本の連合軍、とりわけイギリスとの戦いは、天佑と思えた。インドの独立はイギリスからの独立を意味していたからである。日本にとって、悪名高きインパール作戦も、インド側からすれば起死回生の作戦だったようだ。この戦いのことは、ビルマの竪琴のモデルになった童話作家武者一雄さんの著書にも綴られている。実際に作戦に参加した人の体験談も聞いている。
第五部は、小説というより臼井吉見の独白のようなかたちになっているらしい。病の後遺症の身で、後世に書き残そうとした執念のような内容になっているのだろうか。第五部については、改めて感想を書いてみたいと思う。


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『安曇野(四部)』臼井吉見著 筑摩書房
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