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2016年10月28日

『世界認識』-世界人類としての「共生」と「平和」-藤原書店2300円(税別)



東日本大震災のあった年の7月、岩手県奥州市を訪ねた。この地に生まれた後藤新平の足跡を訪ねてみたかったからである。後藤新平は、関東大震災の後、帝都(東京市)の復興に尽力した人物として知られている。そのことも動機のひとつであった。生家も残っていたが、記念館があった。そこで購入したのがこの本である。
後藤新平は、明治から大正にかけて活躍した政治家だが、若い頃は、医師であった。板垣退助が暴漢に刺されたときに、現場に駆けつけて診察治療したことでも知られている。科学的知識だけでなく、世界情勢に詳しく、歴史や、芸術にも造詣が深いことがこの本を読むとよくわかる。講演の記録もあって、演説も大衆を惹きつける能力もあった。肉声も残っていて、収録したCDで聞ける。
改めて読もうとしたのには理由がある。帝国主義の時代に唱えたと言う「日本膨張論」のことが気になっていたからである。徳富蘇峰の戦後日記を読んだ時に「日本膨張論」という言葉が出てくる。日本には、遅れてきた帝国主義ということが言われる。その内容が、覇権主義、侵略主義、軍国主義であったとすれば、「日本膨張論」は、その根本思想になっているのではないかという関心があった。
読んだ感想としては、後藤新平の「日本膨張論」の背景には、覇権主義、侵略主義はなく国際協調主義がある。国力のバランスも無視していないが、日本の平和主義を主張している。ただ、シベリヤ出兵に賛成した閣僚の立場は、後世批判を受けてもしかたないかもしれない。
安倍内閣の「積極的平和主義」と「日本膨張論」が重ならなくもないが、軍隊が平和活動とはいえ、海外に出て行くと、紛争に巻きこまれる危険性がある。今日、戦前のような朝鮮半島や台湾のような植民地経営ということもなく、満州のような偽装国家という状況にも関わることがない。後藤新平は、その両方に関与している。それなりの成果を果たしている。彼が強調するのは、経済的国家間の協調主義である。海外に積極的に経済投資をすることでもある。後藤新平の政治思想から現代人が学ぶことは、多い。


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