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2016年12月17日

『海は甦える』第5部 江藤淳 文春文庫


『海は甦える』は、大作であった。5部を読了。最終巻に当たる5部は、政治家としての山本権兵衛を描いている。桂内閣の後を受けて内閣総理大臣となった。時代は、大正になっている。ちなみに、歴代総理大臣の中で、通算して最も長く内閣総理大臣を務めたのは桂太郎であった。しかも、長州閥であった。もはや、そういう言い方は死語になっているが、安倍総理も長州出身である。プーチン大統領を招いた長門市が選挙地盤である。
当時、元老がいて、長州閥には、山県有朋や井上馨がいた。薩摩閥は、松方正義、大山巌がいた。西園寺公望もいたが公家の出身である。元老が、天皇に総理大臣を推薦する形になっていた。山本内閣のスタートは順調に見えたが、海軍における汚職事件が明らかになり、予算も成立せず総辞職に追い込まれている。
山本内閣を支えていたのは、政友会という政党で、伊藤博文が初代総裁となって設立した政党であった。平民宰相と言われた原敬が、党の実力者として内務大臣として入閣して山本権兵衛を支えた。政局を見るのに鋭く、弁論にも長けた政治家として描かれている。
原敬は、後に総理大臣になるが、東京駅で暗殺されている。
 尾崎行雄、犬養毅といった政治かも登場し、帝国議会での質疑も詳しく書かれている。速記録として残っているのだろうが、当時の弁舌は、格調が高い。文語調でもある。時たま野次も出てくるのだが、『ヒヤヒヤ』は、どんなニヤンスかと気になった。議長との丁々発止もなかなかの醍醐味がある。
 大正2年の国家予算を見ると、軍事予算が3分の1である。陸軍と海軍の予算の取り合いも激しい。この小説の始まりは、海軍を国防の要にしようという国家観であった。陸は山県有朋であり、海は山本権兵衛であってその両巨頭の争いにも見える。大隈内閣になって、山本権兵衛は、予備役になり、海軍からも去ることになった。


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