☆☆☆荻原悦雄のフェイスブックはこちらをクリック。旅行記、書評を書き綴っています。☆☆☆

2016年12月23日

行く我と留まる汝に秋二つ(2016年12月)

(福岡編)
俳句を紀行のタイトルにするのは、初めてだが、今回の旅は、この句がふさわしいと思ったのである。正岡子規の句で、汝は夏目漱石である。旅の拠点にするのに友人とは重宝なものというのは失礼な言い方だが、日常の時空間にない再会と言う時間と旅先の新鮮さが貴重なのである。一人は、福岡市、一人は津山市の住人である。福岡空港に行き、博多駅から鉄道で津山駅に行き、岡山空港から帰路に着く三泊四日の旅である。二人とも、老後の窓口に立っていると言って良い。健康や、年金生活を意識する年でもある。「行く我」も同様である。
博多駅から鹿児島本線で小倉方面に向かう途中に東郷駅がある。海岸に向かって数キロ行ったところに、古いお社がある。宗像大社である。官幣大社でもある。神社は、三社に分かれているが、辺津宮にお参りすることにした。もう二つの宮は、島にあり普段はお参りすることができない。中津宮は、大島にあり、更に沖合いにある沖ノ島に沖津宮がある。共に玄界灘に浮かぶ小さな島である。宗像大社の歴史は古い。由来は、神代に遡る。
行く我と留まる汝に秋二つ(2016年12月)

祀られている神様は、宗像三女神と呼ばれ、天照大神の御子とされる。古事記や日本書紀に記述される御子の誕生は神秘的である。天照大神の弟君であるスサノオノミコトとの「うけい」によって生まれた姫君とされている。スサノオノミコトの剣を貰いうけ、洗い清めた後、剣を噛み、それを霧としてはいた時に生まれたというのである。スサノオノミコトも天照大神の勾玉などでできている飾り物をすすぎ、これを口に噛んではきだした霧の中に五人の男神を生んだとされる。
辺津宮に祀られているのは、市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)であるが、ご神体は、鏡である。ご神体と社殿に向かいお参りしたが、不思議な気持ちになった。友人の家は、宗像大社の氏子だということを思い出したからである。しかも、三人の女の子の親であることも。一年ほど前に父親を亡くし、辺津宮の一画にある祖霊社に祀られている。鳥居の外から、お参りする友人の後ろ姿を見ながらお参りさせてもらった。
宗像三女神は、天照大神から皇室を守護するように申し付けられている。そのためかは分からないが、三度に渡る国難を救っている。鎌倉時代の元寇(二回)と日露戦争の日本海海戦である。神風を吹かせ、連合艦隊の歴史的大勝利に導いたのは、宗像三女神だと、日本人なら思いたい。特に日本海海戦の戦場となった海域は、沖津宮のある沖ノ島にごく近かった。明治三十八年五月二十七日、海は「天気晴朗なれど波高し」であった。司令官であった東郷平八郎は、戦艦三笠の羅針儀を宗像大社に奉納している。神宝館を見学したが、見ることはできなかった。
行く我と留まる汝に秋二つ(2016年12月)

福岡市に戻り、夕食には時間があったので、友人に水鏡天満宮に案内してもらった。菅原道真を祀っている。この地に移ったのは、黒田長政の時代である。一度お参りした記憶がある。東京裁判でA級戦犯になり刑死した広田弘毅は、この近くに生まれ、石工であった父親の関係で、幼いときに書いた文字が鳥居に掛けられていることでも知られている。誕生地の碑が前にある店で、九大の友人の先生と飲んだ記憶がある。天神の地名もこの神社に由来する。
友人の予約してくれた店も天神にあった。高校時代の友人の息子さんが経営しているお店で、その日に釣れた魚を食べさせてくれるのだという。その日に釣れた魚の名前は忘れたが、刺身や煮魚、天ぷらにしていただいた。海のない県の人間には、こうした食事はなかなかできない。焼酎をボトルで注文し、すっかり酔いがまわってしまった。ホテルは近いのだが、タクシーを拾い、予約した部屋に千鳥足でたどりつく。翌日、友人からメールが届き、無事に着けたかの確認と酒は控え目にというアドバイスを頂戴した。
行く我と留まる汝に冬二つ
盗作である。
ホテルでは、すっかり寝坊。いつもなら五時半に起床するのだが、時計を見ると八時を過ぎている。博多駅からの新幹線は十時をまわっている。津山までは、直行せずに寄り道をすることにしたが、冬至に近く明るいうちにたどり着けるか心配になってきた。岡山県には、閑谷学校と言う史跡がある。亡くなった牧師さんから薦められた史跡で、日本遺産第一号に認定されている。地図を見ると、岡山駅から山陽本線で結構な距離がある。しかも山間にあり、バスやタクシーを使わないと行けそうもない。


同じカテゴリー(旅行記)の記事画像
上野界隈散策(2017年10月)
九州北岸を行く(平戸、武雄温泉編・2017年8月)
九州北岸を行く(唐津編)
春めくや人様々の伊勢参り(2017年4月)
東京の桜(2017年3月)
三十年後の伊豆下田(2017年3月)
同じカテゴリー(旅行記)の記事
 上野界隈散策(2017年10月) (2017-10-20 11:16)
 この母にこの子あり(2017年9月) (2017-09-12 17:44)
 九州北岸を行く(平戸、武雄温泉編・2017年8月) (2017-08-26 09:04)
 九州北岸を行く(唐津編) (2017-08-25 17:19)
 春めくや人様々の伊勢参り(2017年4月) (2017-04-04 17:56)
 東京の桜(2017年3月) (2017-03-27 16:36)

Posted by okina-ogi at 16:24│Comments(0)旅行記
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
行く我と留まる汝に秋二つ(2016年12月)
    コメント(0)