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2012年10月19日

『青空までとどけよ祈り』

  ―銀座の地蔵画家夫妻の歳時記― 小川安夫+小川美佐子 春秋社 1,300円
初版が昭和59年10月20日とある。古本として購入したので、1,300円ではない。おそらく増版されてはいないのだろう。消費税のない時代に出版された本である。インターネットでアマゾンから『遠い旅の詩』から購入し、この本の存在を知り読んでみようと思った。小川安夫さんや、家族の写真が載っていて、皆自然体で絵になっている。夫婦の旅姿の写真は、二人三脚という感じする。二人で人生行路を歩む姿になっている。『遠い旅の詩』と同様に、小川安夫さんの絵も収録されている。彼の語る言葉は、まるで句のようにあどけないが、常人には語りえない深さを感じる。一人旅で得た実感なのであろうが、武者小路実篤や岡潔との出会いで学んだ人生観も加わっているのだろう。「自分を後にして他人を先にせよ」は、岡潔が生涯祖父の遺訓として実行したものだからである。銀座の地蔵画家として世に知られてからの出版なので、高石ともや、喜多郎などと交友ができた。森繁久弥も小川さんの生き方に賛辞を送っている。一番圧巻なのは、美智子妃殿下に東宮御所にお招きをいただいたことが書いてあることだ。小川安夫さんが一人旅をしていた頃、軽井沢で絵が美智子さまの目にとまり、お買いいただいたことがあり、そのことを憶えておられたのである。
小川美佐子さん、小川安夫さんの奥様である。愛媛大学で哲学を学んだ才女で、夫婦の心模様、自身の内面を赤裸々に書いている。彼女の両親から望まれた結婚ではなかったことがよくわかる。生活保護も受けた時代もあり、子育ては大変だった。夫への不満も書いている。彼が世に知られた後の小川さん家族は幸せだったのかと考えてしまった。昭和61年に小川安夫さんは亡くなり、数年後小川美佐子さんもクリスマスの日交通事故で亡くなったという。二人のお子さんのその後はどうなったのだろう。


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Posted by okina-ogi at 08:12│Comments(0)書評
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