2021年11月13日
『富岡日記』 和田英 ちくま文庫 680円(税別)
これが4度目の富岡製糸場の訪問になった。
高校時代からの友人の運転で、彼もひとからならぬ富岡製糸場への思い入れがある。
今、NHKで渋沢栄一を描いたドラマが放映されている。
渋沢も富岡製糸場の建設に深く関わっているが、最初の工場長になったのが渋沢のいとこで尾高淳忠という人である。
漢学を学び、渋沢にとっては師でもある。
末裔に群響の指揮者となった、尾高忠明がいる。
最初は官営であったが日本の殖産の先頭に立ったような役割を果たした。
いつもは、建造物に目がゆくが、ここで働いた女性たちに興味を持った。
展示室の中に図書コーナーがあってこの本が置かれていた。
著者和田英さんの回想録のようになっているが、創設当時の富岡製糸場の様子が良く描かれている。
そして、著者の心境も
目に留まったのは、工場長の高邁な人格であった。
そして、高額で雇われたといえフランス技師たちの配慮である。
休みは毎週日曜日、途中に休憩時間があり、工場内には太陽光が差し込んでいた。
お盆や正月には休みをもらえた。
『女工哀史』にはほど遠い労働環境であった。
15歳から25歳ほどの女性たちには辛い労働であったであろうが、技術を身に着け郷土に帰り指導者になっていった。
和田英さんは長野松代藩士の娘。
「武士の娘」である。
全国各地から富岡製糸に入場したのは、武士階級の女性が多かった。
訪問の折には是非手に取ってお読みいただきたい本である。
Posted by okina-ogi at 17:09│Comments(0)
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