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2015年02月10日

『無名の人生』 渡辺京二著 文春新書 750円+税



友人からの推薦図書である。江戸時代の歴史に関心がある方で、池波正太郎の作品を愛読されている。この本の中にも、江戸時代の日本人の暮らしぶりが紹介されている。身分制度に縛られて、さぞ鬱屈した日々を過ごしているかと思いきや、そうでもなさそうである。貧しさはあったであろうが、飢饉でもなければ、日々平凡ながら幸福に暮らしているように書かれている。幕末に、日本を訪れた外国人の印象は、皆肯定的である。「春めくや人さまざまの伊勢参り参宮と言えば盗みも許しけり」。ちょっとした気晴らしもできたし、寛容なところもあった。裁判も公正で、死罪になるような罪も建前だけで、減刑になることも多かったようである。
渡辺氏は、父親の仕事の関係で若い時、中国大陸で生活した。戦時中にも関わらず、生活に困窮することは少なかったが、終戦後引き揚げ、結核も患いどん底の人生を味わった。若い頃から、大変な読書家でさまざまな仕事をしながら、今日80の齢を超えた。『無名の人生』という書名だが、若干の違和感がある。雑草と言う草はないのであって、それぞれに名前がある。著名でない多くの人という意味なのだろう。自己顕示ということを否定する。この点は同感である。旅人という表現も良い。平均寿命が短く、物質的に豊かではなかったであろう江戸時代の庶民の死生観を想像させてくれたのが、一番の収穫だったと言える。


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