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2015年08月01日

ふぉん・しいほるとの娘(上) 吉村昭著 新潮文庫



歴史小説は、司馬遼太郎をもっぱら読んでいたが、最近は友人から薦められて吉村昭の作品を読むようになった。多作であり、長編のものが多い。歴史観や人物感は、司馬遼太郎より思索が深いとは思わないが、よく資料を調べて書いていることは、共通している。時代背景や、当時の暮らしぶりなどが新鮮に伝わってくる。
署名は、人物をひらがな表記にしているが、シーボルトのことである。一人娘の稲は、父親と同じように医師になった。日本で最初の女医ということになるのだろう。大村益次郎が村田蔵六と言った頃、稲のことが司馬遼太郎の『世に棲む日々』などに紹介されていた記憶がある。上巻の途中、シーボルトが国外追放になるところまで読んだが、稲は、まだ2歳である。
シーボルト事件を読んで考えさせられたのは、人間の好奇心である。シーボルトは、国命を受けて日本の事情を調べる目的で長崎の出島に来たように書かれている。それも事実だとしても、シーボルトの日本への好奇心は尋常ではないと思った。植物の採集は、専門分野だったとしても、国家の最高機密である日本地図を手に入れようとしたことは、当時の為政者であった幕府でも許すことはできなかったであろう。高橋景保という人物が出てくるが、伊能忠敬を調べていたときにその人物を知った。彼も、シーボルトから手に入れたい資料があったのである。これまた、好奇心による。国禁を犯してでも知りたいと思ったのだから、相当な決意だったに違いない。
シーボルト事件に連座した日本人は多い。それほどの罪とは思えない人物が永牢になっている。富岡製紙場が世界遺産になったが、当時、七日市藩というのがあって、その藩の牢に繋がれた人物がいる。稲部市五郎という人で、通詞であったが西洋医学の知識あったらしく、地域の医療に貢献したということがあって、顕彰されるようになった。
シーボルト去って後、ふぉん・しいほるとの娘は、どのような人生を生きるのであろうか楽しみである。



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