2016年04月09日
『数学する人生』岡潔 森田真生編 新潮社 1800円(税別)
今年になって、新たに、数学者岡潔の書籍が出版された。近年、岡潔の復刻版や評伝が世に出るようになり、関心が寄せられるようになった。若い時、岡潔に惹かれた人間として嬉しい限りである。さらに、編集した森田真生は、数学科を卒業した研究者であり、岡潔没後に生まれた人である。確実に、岡潔の思想は引き継がれていくと実感した。
春雨村塾というのがあって、末席ながら私も塾生に加えていただいている。塾生は、世に出た岡潔の著作にはほとんど目を通していると思うが、岡潔の思想が深遠であることもあり、岡潔の次女松原さおりさんを中心に互いに学んでいる。そうした塾生の中から、岡潔の思想を伝えられたらと思うが、至難の業である。個人の思い出、感想くらいは書けても、岡潔の思想を伝えることにはならない。
岡潔が病床に伏す寸前まで、身を削るようにして学生に講義した「京都産業大学講義」のテープが残っており、年一度開催される春雨忌では、拝聴することができる。塾生や遺族の手でこの講義は、文章化されてもいる。『数学する人生』では、この講義録を聴き、活字化されたものを編者が要約したものが掲載されていることが、特筆される。
第3章では「情緒とは何か」を本書の中心に据えている。岡潔が最も強調して止まなかった点である。編者は、30歳。さらに、岡潔の思想を、多くの人々に伝え、広めてくれるのではないかという期待がある。
Posted by okina-ogi at 14:29│Comments(0)
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