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2013年06月08日

『福祉を廻る識者の声』24(棟方忠)

大局を見る                  棟方 忠
 「着眼大局、着手小局」というのは、将棋の升田九段の言であるが、なかなか含蓄のある言葉だと思う。目は大きなところにむけよ、しかし、なすことは小さいことから着手せよともとれるし、目先の小さいことにとりまぎれ、大局を見失うなともとれる。私たちの日常は、めったに大事件などあるわけではない。大ていは平々凡々、小さいことの連続である。それでも方向を誤ると、とんでもない大事になることがある。毎日の新聞やテレビを賑しているいわゆる大事件などもこの例が多い。
 「そんなつもりでなかった」とか、「ついうっかりと」などと実にたわいのない動機で、何千万円のつまみ食いをやったり、尊い人命を奪ったりする。第三者から見ると、そんなつまらないことで一生を棒にふるとは、なんという勿体ないことと思うが、目先のことに目がくらむと、こんな簡単なことさえ分からなくなるものらしい。国会における乱闘騒ぎなども、国民の目には実に馬鹿げて見える。これがわれわれの代表かと情けなくなる。やっている本人たちも、何のためにやっているのか分からないのではないだろうか。大局を見失うと人間が人間でなくなるから恐ろしい。
 傍目八目(おかめはちもく)という語がある。碁をやっている当人たちは夢中になって、目先のことしか分からないものだが、傍らで見ている人は、冷静な判断ができるから八目くらい先まで読めるという意味だそうである。相手の石を殺したつもりで、いい気になっていると、逆に自分の石が囲まれていたなどということは、私たちのヘボ碁にはよくあることである。
 頭の運動には、前後左右のほか、上にもちあげる運動があるといった人がいる。私たちもときには、頭を上にもちあげてみる必要があると思う。大局を見失っていないかどうかを確かめるために。
 
棟方忠(むなかたただし)。一九一四年函館市生まれ。東栄株式会社取締役会長。社会福祉法人函館厚生院理事長。                  

平成元年                 (平成元年・春号)
昭和は去り、四月一日からは平成元年度となった。大喪の礼も終わり、「平成」のことばの響きに少しずつ慣れてきた頃である。
〝降る雪や明治は遠くなりにけり〟
書店に、昭和の歴史書が並ぶのを見ると、明治を昭和に変えれば草田男の句に実感がわく。昭和は実に長く、波乱に富んだ時代だった。
四月一日からは、紆余曲折、消費税がスタートした。その関連で、施設利用者に一時金の支給があった。措置施設では、お年寄りのためにその使途を施設が考えることになった。
ふるさと創生の一億円ではないが、日頃から課題をもっていればすぐ使途は決まる。けれども、日本の福祉は、行政指導型。我々のお年寄りのためには、どうも違っているらしい。小遣いは、子供が使うからこそ成長も意味もある。(翁)


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Posted by okina-ogi at 09:29│Comments(0)日常・雑感
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